スクウェア・エニックスより配信されている「予言者育成学園 Fortune Tellers Academy」は、基本プレイ無料のRPGで、プレイヤーは「予言者」を育成するための学園に入学し、力を高め、異界から現れて人間を滅ぼそうとする亜人種「アルカナ」と戦うのだ。
これだけだと、どこにでもあるようなありふれたRPGに思えるが、コマンド選択式の通常RPGのバトルパートの他に、ゲーム外の「現実に起こる未来の内容」を当てるといった「予言テストモード」というたいへんユニークなコンテンツが存在し、他のゲームにはない独自の面白さを形作っている。
「現実に起こる未来の内容」とは、野球やサッカーの結果、テレビ番組の展開など、本当に現実の出来事を予言(当てる)といったもので、これはRPGという以上に、リアル連動ゲームとカテゴライズできる作品なのであった。
ストーリー
舞台は異界の亜人種「アルカナ」によって、既に人類の9割が滅ぼされてしまった世界。
主人公(プレイヤー)は「アルカナ」に対抗できる唯一の存在「予言者」の素質を持っており、その力を高めるために、予言者育成学園の生徒となる。
ゲームは前述した「予言テスト」とバトルパートを繰り返して進んでいく。
壮大なストーリーは小説形式の縦書きテキストで表示され、たいへん壮大かつ濃密な物語が展開していく。
テキストの内容は、いかにもスクウェアのRPGといった、専門用語連発の正直前時代的ともいえる中二病系ライトノベルで、かなり好き嫌いがはっきり分かれてしまうかも。
公式による紹介
プレイヤーは予言者を目指す学生になり、現実の世の中で“これから”起こる出来事の結末を読み当てる『予言テスト』に挑戦する、新感覚のリアル連動ゲーム(RXG:Real X Game)です。
予言テストとは、様々な国民の関心事(例えばスポーツの結果、アカデミー賞やノーベル賞などの賞の結果、テレビ番組の今後の展開など)をテーマとした8択の問題です。
予言テストは毎日複数問が出題され、現実世界で結果が判明すると自動的に答え合わせが発生します。
実際に予知を的中させることでプレイヤーはレベルアップし、やがてゲーム世界で巻き起こる混乱を救う一人前の予言者へと成長していきます。
ゲームシステム
まずはアバターともいえる主人公キャラをメイキング。
性別や容姿などを選択できる他、ゲームを進めていけば入手した衣装に着替えさせることもできる。
ストーリーが進行するアドベンチャーパートは小説形式。縦書きでたいへん読み易く、雰囲気もある。
ただテキスト量が非常に多く、本を読むのが苦手といった人には向かないかも。
設定した生年月日などが反映された占いの結果で大きくゲームの表情が変わるといったところも、現実の連動性が高く、たいへん興味深いところ。
バトルはターン制で、ユニットのアイコンをタップすることで敵に攻撃していく。
ターン開始前に「予知能力」を発動させることで、敵の次の行動を読めるといった特徴があり、予知に応じてスキルや必殺技を使用する戦術性が必要となる。
敵を倒すと仲間にすることもできる。
グラフィックやBGM
デザインはテキストとマッチしたライトノベルの挿絵風なもので、好みに合うかどうかでグラフィックの評価が変わるように思う。とにかく雰囲気重視なので、合わない人はとことん合わないだろう。個人的にはキャラクターデザインに統一性が薄く、中には極端にクオリティの低いものもあり、全体的な雑な出来だといった印象を受けてしまった。
ゲーム画面や設計は斬新なシステムとは釣り合わないきわめて凡庸なものだが、縦書きの小説風テキストの表示方法など、メイン以外の部分はたいへん良くできている。
音楽はそこそこ雰囲気が出ているが、エフェクトや効果音が微妙など、これもまたバランスの悪さを感じられてしまう。ちょっと惜しいクオリティだ。
総合評価
現実との連動といった、コミュニケーションツールとしての携帯端末ゲームといった現代ゲームの特性を実によく捉えた、たいへん優秀なゲームである。とにかく感覚的に簡単に遊べるといった点も高く評価することができるだろう。
しかしその面白さと豊かさ、そして斬新さを、少しも活かせていないクオリティの低さが、このゲーム性の価値を著しく落としてしまっているので、返す返すも残念でならない。
またバトルパートというメインコンテンツの1つが旧時代すぎる作りで何の存在感もなく、もはや煩わしさすら覚えてしまうのもマイナス。一応は「確定していた未来を変えて紙一重で勝利する」というなかなかよくできたコンセプトが盛り込まれてはいるのだが、レア度の高いキャラクターがちょっと揃っただけでただのタップ作業になってしまうのである。
雰囲気を重視しすぎて、せっかくのミステリ要素や群像劇といった根本を活かせていないシナリオ・テキストのお粗末さも惜しい。素人ではなく、ちゃんとしたプロの小説家を雇うべきだったと思う。
ただそれでも、キャラクター収集が「低ランクカードでもダブると合わさってランクを上げてくれる」仕様だったり、課金式を報酬で景気よく与えてくれたりと、これからのスマートフォン向けゲームの良化と可能性を感じさせてくれる作品でもある。
たいへんクセの強いのゲームなだけに、まずは合うかどうかをお試しいただきたい作品だ。