本作は、チェスのようなボードとシステムで表現されたシミュレーションバトルを楽しめるファンタジーRPGで、プレイヤーは「守護者」と呼ばれるキャラクターたちを操作して、帝国の侵略から国を守るための激しい戦いを繰り広げていく。
とにかくバトルの設計が硬派で、難易度も骨太。1ステージのバトルだけでもかなりの歯応えと充実感があり、勝利できた時の達成感はなかなかのものである。
こうした、力押しのプレイや、強いユニットを持っていれば勝てるといった、スマートフォン向けゲームによくある作りではないというところが、本作最大の特徴であり、良いところであるといえるだろう。
ストーリー
ゲームは、強大な力を持つ帝国の皇帝と対峙した、ラストバトルのような状況からスタートする。
戦いは残念ながら主人公たちの大敗北。皇帝の力はあまりにも圧倒的であったのだ。
そこで、切り札の力を解放したヒロインは、その力で独り10年前の過去へと逆行。
最悪の未来を回避するべく、ヒロインは主人公たちと出会うところから全てをやり直していくことになる。
たった1人、未来の悲劇を知る者として、孤独な戦いを続けていくことになるヒロイン……と、本作のストーリーは暗めで、重厚かつ悲壮感の漂うもの。
過酷な展開の連続に、ついつい先はどうなるのかとプレイする手が止まらなくなってしまうこともあるかも。
ゲームシステム
メインコンテンツはストーリーモードだが、対人戦コンテンツも充実しており、やり応えは充分すぎるほどある。
「冒険」が、ストーリーを進行させることのできるゲームモード。
他プレイヤーとのランキングを競い合う昇級戦などは、ゲームを進行させていけばどんどん解放されていく。
ストーリーはアドベンチャーパートや、バトル画面での会話劇で進行していく。
テキスト量が多く、見応えはかなりある。
バトルはターン制。制限ターン内に全ての敵を撃破できれば勝利となる。
敵味方キャラクターの移動範囲は、ルークやビショップといったチェスのコマと同じというのが本作の特徴。
上手く効率的に動かし、連携技を繋いでいけば、ステータス差のある強力な敵でも撃破することが可能なのだ。
プレイアブルキャラクター「守護者」が、なんと200種類以上いるというところも驚くべきところ。
時間経過で解放される無料ガチャなどが多数あるので、よくよくチェックしておく必要があるだろう。
ショップでは装備品などを購入することができる。
限定アイテムなどの情報量がやや多めなので、こちらも小まめにチェックしておこう。
グラフィックや音楽
グラフィックやサウンドなど、あらゆる面のクオリティが高く、かなりの満足感を得ることができる。
キャラクターデザインは日本人好みといえるもので、実に美しく、本格ファンタジー小説の挿絵を見ているかのような感覚さえ得られるだろう。
そうしたキャラクターたちはフルボイスとたいへん豪華。加藤英美里や中島ヨシキなど、重厚な世界観に相応しいキャストが揃えられている。
ただ、バトルの作りが本格的すぎるためか、エフェクトなどの演出面がやや弱く感じられ、爽快感は薄い。
また、倍速モードなどもきちんと備わっているものの、それがゲームテンポの良さに繋がっていないという惜しさも見られる。
総合評価
丁寧に作り込まれたシミュレーションRPGであり、たいへん完成度の高いゲームとして成立しているのであるが、テンポの良さやお手軽さを求めるユーザーの多い現代では、なかなか相応しい評価を得ることが難しそう。
実際、戦略性も戦術性もきわめて高いバトルシステムは、どうしても玄人ゲーマーやヘビーユーザー向けの内容といえるものがあり、ライトユーザーが遊ぶにはいささか厳しいところがある。
そうした難易度の高ささえ問題なければ、豊富なキャラクターや育成など、やり込み要素もたいへん多いので、きっと長く楽しみ続けることのできる素晴らしい作品となることだろう。
かなりプレイする人を選んでしまう作品であるが、だからこそまずはお試しいただいて、自分の好みに合うかどうか、その相性を確かめてみてほしい。