スクウェア・エニックスより配信されている本作は、8枚のカードで編成したデッキを用いての1VS1バトルを楽しむことができるスマートフォン向けリアルタイムカードバトルだ。
手持ちのカードをフィールド上にスワイプすることで、オートで敵陣へと侵攻してくれるユニットを召喚したり、範囲攻撃や特殊効果のスキルなどを発動させたりしながら、先に相手の本拠地を破壊できれば勝利となるルール。
カードバトルにタワーディフェンスの要素が加味されている内容ともいえるだろう。
超有名イラストレーターや、大人気声優によるフルボイスのストーリーモードなど、豪華スタッフやキャストにより大いに注目を集めている作品である。
ストーリー
メインコンテンツの1つであるソロプレイモードでは、裏切りにより王国を失い、怒りと憎しみから、使い魔を使役することのできる能力者「ロード」として覚醒した、悲劇の少女「ディアナ」の物語を描いたクエストを体験することができる。
過酷なシナリオだけでなく、重厚なタッチのイラストもあって、かなり深いダークファンタジーの世界が展開していく。
とにかくボリュームもあるので、世界観にさえマッチできるのならば、シナリオを重視するユーザーでも、きっと満足することができるはずだ。
ゲームシステム
CGとイラストを交互に組み合わせたアドベンチャーパートを楽しみつつ、重厚感あるストーリーを進めていくのがメインコンテンツとなる。
クエスト挑戦にはスタミナなどは必要ないが、クリア時に得られる宝箱を開けるには「アルカナ」という数値が必要で、これには制限があるので、報酬を得たい場合は時間を空けながらプレイした方がいいだろう。
バトルはリアルタイム制で、常に先を考えながら臨機応変に対応していく必要がある。
カードを出すにはコストが必要となり、そのコストは一定時間が経たないと蓄積しないので、戦況やカードの特性を見極める力も必要だ。
イベントクエストなどが随時更新されているなど、ボリューム感は満点。
簡単には遊び尽くせないほどだ。
カードはガチャで入手できる。
世界的なイラストレーターである天野喜孝やキム・ヒョンテなどの描いたキャラクターを使うことができるなど、看板通りのかなり豪華なものとなっている。
グラフィックや音楽
完成度の高い3DCGや、有名イラストレーターによる美麗な絵を活き活きと見せている表現性の高さなど、グラフィックのクオリティはかなりのもの。
ただ多くのクリエイターが集結している形のために、どうしてもタッチに差異が生まれ、統一感は薄い。違和感を覚えてしまうこともあるかも。
また音楽がフリー素材なのか流用なのか、低品質なだけでなく、どこかで聴いたものばかりで、どうにも白けてしまう。
それでも内田真礼や梅原裕一郎といった大人気若手声優や、大塚明夫や能登麻美子といった熟練の声優たちによるフルボイスで展開していくメインストーリーは圧巻で魅力的。
演出面も優れており、カードを出した時の手応えなどがしっかり作られていて、爽快感のあるものとなっている。
総合評価
せっかく演出面が優れているのに、ゲームデザインがやや雑でちょっと遊び難いなど、パッと見でも多くの問題点が見えてしまう惜しい作品。
また同タイプのゲームも多く存在する中、もはや豪華スタッフやキャストの看板は求心力として弱すぎるようにも思う。たとえ一時の注目を集めることができても、新しいゲーム性や何らかのオリジナリティがなければ、わざわざ他のゲームから乗り換える材料にはならないのではないだろうか。
しかし実際にプレイしてみれば、対戦を重ねるごとに本作の魅力は増していく。なんといっても、カード1枚1枚の設定が細かく、戦略性の幅が広大で、デッキを追究していくほどにカードゲームとしてかなり優秀であることがわかってくる。またタワーディフェンスのシステムもシンプルであるからこその奥深さがあり、戦術性も多様で奥深い。知性と感性を働かせて遊ぶことのできる、かなり面白味のあるゲーム内容なのだ。
また、カード強化などの作りも上手く、ゲームバランスもなかなか良い。無課金でもやり込むほどに強くなっていくことができるだろう。シナリオの重厚感もあって、良質なRPGとしても楽しむことも可能である。
ただそこでまた惜しく感じてしまうのは、ゲームをプレイしているとすぐに端末が熱くなってしまうという、異常なまでの発熱量がある点だ。バッテリーの消費も激しく、せっかくスタミナ制限のないシステムなのに、長い時間のプレイができないという、なんとも歯痒い思いを覚える作品なのである。一刻も早い改良を期待したい。