本作は、3DCGによる立体ステージの中で、数々のギミック(しかけ)を動かし、ゴールへのルートを確立するといったアクションパズルゲームである。
もっと具体的に、そして端的に言ってしまえば、タイトルから連想できるように、いわゆる「ピタゴラスイッチ」を作り出していく、という内容。
ステージクリアの条件は、ゲートから転がってくる岩が、再びゲートに戻ってまた転がり続けるようにすること。つまり「永久機関」を成立させることだ。
ギミック同士を連鎖させ、壁を作ったり、穴をふさいだり、ジャンプさせたり、時には自分が岩のように転がったりして、装置を完成させていく……。
アクション要素はあるが、時間制限もなく、スタミナ制限もないので、自分のペースでじっくりと考えていける、本格的な立体パズルゲームでもある。
個人制作のインディーズゲームではあるが、完成度という点では企業作品にひけをとらない作品だ。
ストーリー
天高くそびえる謎の巨大な塔に挑む、探検家のような格好の主人公を動かしていく。
物語は謎に包まれているが、ステージ内に落ちている「紙片」を拾い集めていくと、主人公によく似た少女と、その家族らしき人を描いた絵が完成し、少しずつ物語が語られていくようになる。
はたして、塔の頂上には何が待っているのだろうか。
ゲームシステム
謎めいたメッセージが表示され、プレイヤーをどことなく不安にさせてくる雰囲気があるが、ミステリーであってもホラーではなさそうだ。
塔をひたすら上り続けるという点では、「倉庫番」というよりは「バベルの塔」というファミコンゲームの例を挙げた方がより分かりやすいかもしれない。
ステージは40以上。1つ1つ、ゆっくりと丁寧に解き明かしていこう。
3Dのステージは、ぐるぐると視点を変えて眺めることができる。
真上からゴールへのルートを確認するだけでなく、時には真横から確認しないと解けないこともあるので、まずは全容をしっかり把握することが肝心だ。
また、高さや坂、さらにはジャンプなどのギミックの、それぞれの効果や結果を鑑みて、的確に作用させていく必要もある。
ゲームオーバーも時間制限もないので、とにかく色々なことを試して検証していこう。
なかなか手応えのある難易度なので、パズルゲームファンなどはきっと満足できるはずだ。
パズルゲームや思考系のゲームが苦手なプレイヤーでも、解けない時はヒントを見ることができるし、なんと優しいことにステージスキップの機能もあるので、気軽に楽しめるようになっている。
先に進むほどにステージは広くなり、地形は複雑化し、ギミックは増え、難易度が跳ね上がるが、序盤で面白さを感じられているのであれば、きっと長い時間をかけてゆっくりと解いていくことに楽しさを見出すことができるはずだ。
ステージを攻略しつつ、破片集めも忘れずに行っていこう。
不思議な雰囲気の物語もまた、この作品の魅力の1つである。
どこかにひっそりと転がっていることもあるので、視点を動かしてよく確認した方がいいだろう。
グラフィックや音楽
グラフィックは正直前時代的というか、もはやレトロゲームと感じてしまう程度のクオリティである。
しかしだからこそ味があるというか、作品の雰囲気に合っているのだともいえるだろう。
巷に豪華でド派手な作品が多くあるからこそ、あえてこうしたシンプルな作品で遊びたいと感じているユーザーも多いはず。
侘び寂びの精神で楽しめる作品ともいえるのだ。
総合評価
シンプル・イズ・ベストという言葉は、こういったゲームを遊ぶ度に思い起こすことができる言葉である。
転がる玉を永遠に転がっていくように工夫する。と、たったこれだけのゲーム内容でも、こんなにも豊かで、刺激的なものとなるのだと、たいへん興味深い作品であった。
そして、ピタゴラスイッチ、あるいはアメリカにおける「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」と呼ばれる、この複雑かつ面倒くさく、とにかく無駄加減さに着目した仕組みの、面白さと巧妙さと奥深さを、改めて思い知らされたかのようでもある。
様々なギミックと、立体空間を駆使したステージがプレイヤーを待っている。パズル好きや思考ゲームが好きな人に、ぜひとも試していただきたい作品だ。
そして気に入ったのであれば、有料のWindows版にもチャレンジしてみてほしい。