ひとたがやし…なんともゾッとするようなタイトル、しかしこれはホラーゲームではない。

プレイヤーは巨大な「なにか」と戦うための兵士を作るために、大地を耕し、種を植え、兵士となる「ひと」を栽培し収穫する。

操作は指示された矢印の方向にスワイプするだけ。

引き抜いた「ひと」たちは「なにか」に向かって突き進み、戦い、そして死んでいく。

全てを倒すか倒されるか……終わりのその時まで、プレイヤーはまた新しく「ひと」を栽培していく。

ゲーム性はほとんどない。物語もない。しかし恐ろしいまでの濃い内容が詰まっている。

プレイヤーの感性によって様々な形に変化する、そんな奥の深いゲームだ。

ストーリー

これはＳＦなのか神話なのか、滅びた世界の物語なのか、これからの物語なのか、かつての物語なのか、それとも現実のカリカチュアなのか。

おそらくプレイした人それぞれに答えのあるストーリーであると思う。

人によっては何の中身もない話だと思うかもしれないし何もかもよくかわらなかったという人もいるかもしれない。

だがわからないということも正解なのだ。

全ての「なにか」を倒した時、プレイヤーは集めた「なにかのかけら」から何を読み取るのか、何を感じるのか。

透明な物語を好きなように感じてほしい。

ゲームシステム

プレイヤーは、とにかく「ひと」を栽培するために大地を耕し続ける。

「ひと」を収穫すると「なにか」との戦いが始まり、討伐できると「なにかのかけら」を手に入れることができる。

それぞれの「なにかのかけら」には、様々な世界の秘密が眠っていて、触れることで情報を読み取ることができる。たくさんの「なにかのかけら」を読んでいけば、どうしてこんな状況になっているのかがわかっていくことだろう。

「ひと」を量産する「たがやす」は、大地を耕す→苗を植える→収穫する、の３パートに分かれている。

どのパートも全て指示された方向へとスワイプするだけ。

ただ前パートでのスワイプ成功数が、次のパートの挑戦回数になるので、３パート共に気が抜けない。

「ひと」は数こそが力。できるだけ多くを収穫しよう。

そして「ひと」は「なにか」と戦うために戦場へと送られる。

戦闘パートはフルオートなので、プレイヤーはただじっと見守ることしかできない。

彼らは「せんとうき」や「せんしゃ」に乗っていても、弱く脆く、すぐに死んでいく。だが所詮は捨て駒。足りなくなったらまた栽培すればいいだけのことである。

戦いは「なにか」を倒すか「ひと」が全滅するまで続く。

全滅したら新しく「ひと」を栽培し、再挑戦しよう。捨て駒たちが削った「なにか」の体力はそのままなので、これは必要な犠牲だったのだ。

上手く「なにか」を倒せたら、また新しい「なにか」に挑むための「ひと」を栽培しよう。全ての「なにか」を滅ぼすまで、戦争は続くのだ。

だが「なにか」はあまりにも強大で、簡単には打ち勝てない。だから耕した時に手に入れた歯車のようなパーツを使って「つよくする」ことが必要となる。

「せんとうき」や「せんしゃ」を強くしたり「ばくだん」を多くしたり、他にも「たがやす」効率を上げたりすることができる。

最も強力なアイテムは「ゆうきのでるくすり」だ。これは注射器のアイコンが出ており、使用すると「ひと」の「ゆうき」が出るのである。さあ「ゆうきあるひと」たちを戦場に送り、強敵たる「なにか」を滅ぼすのだ。

グラフィックやBGMなど

黒と薄墨の画面。そして戦闘では赤が混ざる。全ては影ではっきりしたものは何も見えない。

よって、グラフィックの評価は難しい。それを味と感じるのか手抜きと感じるのかは人それぞれだからだ。

デザインの全てがそうした「雰囲気」によってのみ作られている。そこには恐怖もあるし、穏やかさもある。

あとはただ美しくも切ない、澄んだメロディーが流れ続けている。

ゲームはどこまでも透明だ。

総合評価

独特なゲーム。独特すぎるゲーム。かなり人を選んでしまうゲームであるがプレイしてみて「刺さった」人にとっては、一生心に残るようなそんな深みのある作品である。

個人的にはスマートフォン向けゲームの、新しい価値のようなものを垣間見れたような気がした。