アーケアと読むこの作品は、タップ・長押し・スライドで音を繋いでいく従来のリズムゲーム(音ゲー)に、新たに「高さ」の概念を取り入れた野心的作品である。
ピアノの鍵盤を思わせる「ライン」という平面に加え、上下左右にスライドさせて音を奏でるといった「スカイノート」といった立体的な操作を求められるのは、なかなか新鮮な体験であった。
リズムゲームに慣れきったプレイヤーに、新しい刺激を与えてくれるかも。
ストーリー
物語というか、コンセプトを示したテキストが冒頭で表示される。
そこには、失われた世界を探し求める二人の少女が辿り着いたのが、この「アーケア」と呼ばれる場所であるということが書かれている。
「アーケア」とは、世界の欠片で満たされた場所。
明言こそされていないが、おそらく欠片……そのリズムを集め、世界を再生していくといった形で、ゲームが設定されていると考えられる。
全体的に幻想的な雰囲気を漂わせており、それはボーカロイドのボイスとも溶け合って、若いプレイヤーに響きそうな独特の世界観、いわゆる中二病的な世界が広がっている。
ゲームシステム
実に個性的な作品であるが、本作のもう1つの特徴としては、初めにネットワークに接続し、ダウンロードしておけば、その後は接続の必要がなくなり、オフラインでいつでもどこでもゲームを楽しむことができるという良点が挙げられる。これはたいへんありがたい。
多種多様な楽曲から、好きな楽曲を選んでゲーム開始。
数字は難易度を表しているので、まずは少ない数の楽曲からプレイしていこう。
プレイ中に画面左側に表示されているゲージを70以上溜められればクリアとなる。評価に応じて「記憶の欠片」を報酬として獲得することができる。
楽曲に合わせて画面奥から流れてくるノーツ(音符)を、リズムや目押しで、タイミングよくタップし、曲を繋いでいこう。
リズム合わせで上手くタイミングが合わないという人は、設定画面で調整してみれば上手くいくかも。
クリア報酬で獲得した「記憶の欠片」を消費することで、新しい楽曲をアンロックすることができる。
このように、白の世界に相反する黒の世界も存在し、また趣きの異なった楽曲や世界観を堪能することもできる。
BGM・グラフィック
幻想的な雰囲気と、それに対照的な前衛的デザインが、絶妙なバランスで融和しており、たいへん美しいゲーム世界を描き出している。とりわけノーツなどゲーム画面の硬質的無機質的CGと、背景の儚く冷たくも美しいシルエットの合わさり方が素晴らしく、また光が流れていくような演出も重なって、ゲーム中は最高に「酔える」時間となるのだ。
そうした中、楽曲もまた、どれもたいへん良質。ボーカロイドなどを使った、現代的楽曲ばかりであるが、ジャンルや曲調などのバラエティは豊かなので、どんな世代のユーザーでも、きっとお気に入りの楽曲に出会えるのではないだろうか。
全体的に、クオリティという以上に、完成度の高い作品であるといえる。
総合評価
見た目こそ雰囲気の重視のゲームに見えるが、実際に触れてみると、そうした雰囲気作り以上に、立体空間を使った新しいリズムゲームとして、かなり入念に作り込まれていることがよくわかるだろう。譜面の複雑性や多様性、そして難易度の設定などからしても、実のところはヘビーリズムゲームユーザー向け作品であるともいえる。
もちろん曲を選んでプレイしていけば、ライトユーザーや、リズムゲームが苦手という人にも、きちんと遊び続けられるようにも作られており、間口はかなり広く作られてもいる。
また、やはり雰囲気や世界観から、若いユーザーや、中二病的作品を好むユーザーに適しているといえるだろう。ゲーム空間やジャケットイラストの美しさを見るだけでも、充分にダウンロードする価値のある作品だ。
注意点は、作り込まれすぎているせいか、携帯端末のスペックが低いと、重すぎてまともに動かないという点か。機種によっては音割れしてしまうといった報告も多い。この点は事前に調べておくか、実際にゲームを試してみて確かめるしかないだろう。