歴史的名画である『ゴッド・ファーザー』は、これまで多くのゲームも作られてきた作品である。
本作はスマートフォン向けクライムシミュレーションゲームとして作られており、プレイヤーは映画の主人公たちが所属する「コルレオーネ・ファミリー」の一員となって、数々の裏家業に手を染め、ファミリーの勢力拡大に尽力していくことができる。
荘園(ホーム)を発展させる箱庭ゲーム的要素と、全世界のプレイヤーとオンライン対戦で縄張り争いをしていくといったリアルタイムストラテジー要素が、本作の主軸。
原作のエピソードやキャラクターたちを楽しみつつ、ピカレスクロマンな世界に浸ることができるゲームだ。
ストーリー
ナビゲーター役が、映画史上最も偉大なキャラクターとして有名なヴィトー・アンドリーニ・コルレオーネというたいへん贅沢な作り。
本作では、フランシス・フォード・コッポラの映画版を、実に忠実に、そして細かく描いている。メインのバトルでは原作ストーリーを再現したものなどもあり、作品ファンには嬉しい内容ともいえるだろう。
また映画版だけでなく、原作となったマリオ・プーゾの小説版まで網羅したような描写も見られ、作り手の拘りがひしひしと感じられるようだ。
ただ残念なことに、ローカライズが徹底されておらず、明らかな誤訳、珍訳どころか、英語のそのままという酷すぎる手抜きも散見。雰囲気を壊さないためにも、初めから英語版を選択してプレイした方がいいのかもしれない。
公式のアプリ紹介
ゲームシステム
映画では名役者マーロン・ブランドが演じた、あのドン・コルレオーネ様がプレイヤーをお出迎えしてくれる。あの「悪い奴の膝の上には猫」というイメージを作った、伝説的ともいえる光景だ。やけにぬるぬる動くグラフィックは必見。
しかもドンは、これから先もナビゲーター役として、プレイヤーに様々な指示を与えてくれる。さすがドン。ついていきます。忠誠を誓います。
……早速、盛大な誤訳というか、明らかにこれ、グー〇ル翻訳って感じの翻訳で、文脈が繋がっていない。やはりできれば英語版でプレイした方が、雰囲気を壊さずに楽しめるかも。
本作では2017年3月現在、11か国語から言語設定できる。
まずは裏稼業に臨む、達成報酬でブラックマネーを獲得しよう。この金で荘園(ホーム)の施設を建造し、アップグレードし、工場や射撃場、地下ボクシング場などを運営していく。
そうすればさらに金が積もっていくのだが、治外法権が通じない荘園の外では、ブラックマネーはおいそれと使うことができない。アシがつくからだ。
そこで必要となるのが金洗浄(マネーロンダリング)である。粉飾決算に虚偽取引、密輸やカジノで、時間をかけてホワイトマネーへと変換していくといった作業が求められる。なんというか、本格的だなぁ。
あとは金で集め、鍛え上げた兵隊を使って、縄張りを荒らす他組織の連中をぶっ潰そう。もちろん、こちらから他プレイヤーの縄張りを奪い取ることだって可能だ。やらなければやられるだけなのである。
バトルはフルオートの簡素なもの。訓練や部隊編成などの事前準備が全てだ。
グラフィックや音楽
グラフィックは、映画版を再現することを意識したキャラクターデザインはとにかく雰囲気があり、味わい深い。
絵の動かなさや地味すぎるバトル画面など、全体的には一時代前のPCゲームといった程度のクオリティといった感じで、お世辞にも良いとはいえないところがあるが、フィルムのコマやシルエット、そしてクラシカルな色彩などを巧みを利用した演出の数々は実に上手く、風格は満点で、上質のゲームであるようにも思えてくる。
総合評価
バトルのショボさ、ローカライズの未達成など、ガッカリな部分が多い低クオリティ作品。しかしそれでも、前述のような演出の上手さも同じくらい存在し、かえって作りの「上手さ」を感じられるほど。古き良きゲームの工夫のようなものが垣間見える。
またスマートフォン向けゲームということを実によく理解している便利な機能の設置、見易さと遊び易さが徹底されているのは、かなり高く評価することができるだろう。特に施設のアップグレードが整理し易い「キュー」というシステムはたいへん素晴らしく、同じようなストラテジーゲーム全てに実装してほしいと思うほどだった。
ゲームを進めていけば広大なワールドマップでプレイできるようなり、そこからは対人戦がメインとなる。実のところ、本作が面白くなるのはそこからであり、そこが本当の「はじまり」でもあるともいえるだろう。なので、少しプレイしてみて、わずかでも自分に合うような感覚があったら、ぜひともワールドマップ解放までは遊んでみてほしい。なかなかに熱い「しのぎの削り合い」を体感することができるだろう。
本作は原作好きや映画好きだけでなく、RPS(リアルタイムストラテジー)好きや箱庭ゲーム好き、そして退廃的ノワールやピカレスク・ロマンの世界観が好きなプレイヤーにもオススメすることができるゲームだ。