玩具開発で有名であり、数々のカードゲームも開発してきたタカラトミーとホビージャパンによって共同開発されたスマートフォン向けカードゲーム作品。
それが本作『WAR OF BRAINS』である。
設定や世界観の構築とストーリーの組み上げをタカラトミーが行い、それを受けてホビージャパンがデザインしたというこの作品は、サイバーパンクとファンタジーが融合したような独特の雰囲気があり、かなりの重厚感が感じられる。
また「耳で楽しむカードゲーム」というコンセプトがあり、BGMの迫力やクオリティの高さなど、最も力が入れられている点が他のカードゲームと異なるというところも独自性があり、たいへん興味深い。
2016年12月2日より配信開始となったばかりの作品であるが、既にカード数は180種類を超えており、完成度は高い。プレイヤーは数あるカードの中から40枚を選んでデッキを組むという本格カードゲーム仕様でもあり、熟練のカードゲーマーには見過ごせないタイトルであるといえるだろう。
ゲームレビュー
舞台は未来世界。果てしない紛争の続く疲弊した世界で、戦争の形態は「電子戦争時代」へと変化していた。プレイヤーはコンセプトの異なる5つの国家から1つを選択し、その国のエージェントとして、カードを使っての電子戦に挑むことになる。
と、ざっといってしまえばそんな物語であるのだが、とにかく専門用語が乱れ飛ぶ難解な世界設定なので、いささか理解するのに時間と読解力が必要になる。SF好きやライトノベル好きの人にとっては慣れ親しんだところがあるともいえるので、作品世界に入り込み易いのではないだろうか。
また豪華声優陣によって喋りまくるナビゲーターキャラクターを自由に選べたりするので、アニメ好き声優好きの人も楽しめる作品かも。
まずは長い長いチュートリアルが始まる。
この初心者用ステージだけで3ステージもあるので、開始する時は時間に余裕がある時にしよう。ナビゲーターは5人いて、どの子も人気声優の声でガンガン喋ってくれる。自分の好みに合った子を選択出来るようになっている。
カードはガチャならぬパッケージ開封で入手できる。当然ながら購入するには課金石が必要となる。パッケージをいう名称にしているだけあって、カード開封時は妙にリアルだ。
それぞれ消費メモリー数やパワー値、そして固有のカード効果など、様々な設定がある。強力なカード、レア度の高いカードを使用すると、特殊な演出効果が発動するのでお楽しみに。
バトルはターン制。1ターンに1枚カードをドローし、もう1枚引くかメモリーを増やすか選択する「リブートフェイズ」に入る。
その次はカードを場に出す「メインフェイズ」に移行し、最後には相手に攻撃を仕掛ける「バトルフェイズ」となってターン終了となる。
ゲームは対人戦が基本になるが、他にもナビキャラと練習試合できるモードや、専用デッキを組み上げて戦うビルド戦など、なかなか趣深いコンテンツが揃っている。
総合評価
『WAR OF BRAINS』はカードゲームということで、当然カードのグラフィックのクオリティは高く、どれも実に美麗。男女問わずどのカードでも描き込みが凄まじく、思わず見入ってしまう。
ただバトル中の背景の簡素さ味気なさには首を傾げてしまう。サイバーパンク感というか、デジタル感を出すための演出としているのかもしれないが、それはあまりにもカードのクオリティと差がありすぎて、単なる手抜きにしか捉えられない。
またBGMやボイスに力が入れられているのに対し、攻撃エフェクトなどの演出効果があまりに乏しく、これもまた釣り合っておらず、ゲームのクオリティを著しく下げてしまっているようにも思う。
迫力と重みのあるBGMは必聴で、強引にゲーム世界に引きずり込まれるような感覚もあり、だからこそなおのことマイナス面が惜しく感じられてしまう。とにかく全体のバランスが悪く、口コミにおいてもその様な書き込みが目立つ。
上記のようなクオリティのアンバランス感がいささか気になってしまう作品であるが、しかしそれでもなお魅力を感じられる、何か圧倒的なパワーのようなものが確かに存在している。今後アップデートなりで改善されていけば、かなりの良作に化けることもあるだろう。
しかしながら本格カードゲームでありすぎて、初心者やライトユーザーの参加を完全にお断り状態にしてしまっているため、はたしてゲーム人口が増えていくのかは疑問。
何よりもまず、ルールなどがあまりにも難しすぎる。奥が深いのはけっこうだが、全てがそれでは上級者だけがたむろする場となり、なんのためにスマートフォンのオンラインという環境を使用してのゲームとして作ったのかがわからない。
『WAR OF BRAINS』は完全に玄人のカードゲーマー向けであり、それ以外のプレイヤーが遊ぶにはちょっと厳しいと言わざるをない作品である。腕に自信のあるプレイヤーは、ぜひこの奥深い本格カードゲームの世界に飛び込んでみてほしい。