『1ビットローグ ダンジョン探索RPG！』はシンプル設計のターン制ローグライク系ＲＰＧ作品で、タイトルにもある「１ビット」のドット絵によって全てが表現されているといった「疑似レトロゲーム」ともいえる装いで作り込まれている。

プレイヤーは５タイプのジョブから１つを選んで操作し、全５０階のランダムに生成されるダンジョンへと挑む。ゴールド稼ぎと最大ＨＰ上げしかできず、しかも死ねば全てがリセットという、ローグライク系ならではの過酷なシステムも勿論搭載されている。

何度ゲームオーバーになっても立ち上がれる、強靭なプレイヤーにこそ適合した骨太なゲームだ。

ゲームシステム

ストーリー

プレイヤーは３００年の時を超えてボルドフ王によって復活させられた英雄。

王国のために必要な４つのアーティファクトを探し出せという命を受け、王国の地下に広がるダンジョンへと挑むことになる。

レトロゲームの王様にありがちな、上から目線で無茶苦茶な注文をしてくる奴である。しかもかなりのケチで、軍資金どころか装備品すら用意してくれない。そう、本作も全ては自給自足。金も装備品も全てダンジョンの中で手に入れていくのだ。

ダンジョンで入手できる装備品は、使えばすぐに壊れてしまうものばかりなのだが、ゴールドさえあれば新しいジョブを解放できたりもする。

繰り返しのプレイで英雄を育成したら、各階に潜むドラゴンを討伐してアーティファクトを集め、最奥の地下５０階を目指そう。

ゲーム概要

まずはオープニング。『1ビットローグ ダンジョン探索RPG！』の目的ともなる「ボルドフ王からの頼み事」は、設定や世界観を簡単に教えてくれるたいへんありがたい（？）メッセージにもなっている。

ダンジョンの操作は仮想パッド。敵を倒し、宝を取り、トラップを超え、ダンジョンを下へ下へと進んでいこう。

道中には女神の像による祝福など、様々な仕掛けも用意されている。下層に行けば行くほど強敵や、恐ろしい状態異常効果を持ったモンスターが待ち受けているというダンジョンRPG定番の内容だ。

ダンジョンで獲得したゴールドによって、他のジョブを解放することができる。ジョブにはそれぞれ様々な特殊能力が備わっているので、積極的にゴールドを貯め、解放していけば、冒険はどんどん楽になっていくはずだ。

『1ビットローグ ダンジョン探索RPG！』は無料だが、遊んでみて気に入ったら、ぜひ作者にビールの１杯でも奢ってあげよう。ほんの１杯分のお金を支払うだけで、１ビットから３ビットにゲームがグレードアップ！

まるで「ゲームボーイカラー」のような、懐かしの淡い色彩を楽しむことができるようになる。これはまたこれで、たいへん趣がある。

総合評価

あえて１ビット、されど１ビット。シンプルやレトロといった以上に、徹底したこだわりをもって作り込まれたドット絵の数々はたいへん完成度が高く、実に美しいグラフィックとして昇華されている。

合わせて音楽もピコピコ音で処理されており、さらにぐっと雰囲気が深まって、実に心地好い。あの頃、まだカラーですらなかったゲームボーイを、壊れるまで遊びつくしたオールド・ゲーマーたちにとっては、郷愁を思わせる作品に思えることだろう。

だがそれは、単にノスタルジーに依存した作品というわけでは決してない。あくまで「１ビットという表現手法を用いて」新しい絵作りにチャレンジしているという意気込みが、ここには確かに存在する。

きっと新しい世代のプレイヤーたちにも、この美しさは届くはずだ。

１ターン１ターン、まるでパズルを解くように思考と決断を求められる深いゲーム性は、まさしくローグライク系ＲＰＧの最大の魅力であり、面白さである。本作にはそれがきちんと作り込まれており、シンプルでありながら、かなり奥行きのあるＲＰＧとして楽しむことができるだろう。

だがそれだけに、難易度の高いゲームが苦手なプレイヤーには向かない。また何度も挑み続けられる忍耐力がないプレイヤーにも向かない。ある程度の自身や腕前が求められてしまうのが、ローグライク系作品の仕方のない欠点なのである。

かといって、『1ビットローグ ダンジョン探索RPG！』はあくまでシンプルゲームの領域なので、例えば「風来のシレン」などの作品をかなりやり込んでいるようなヘビーユーザーにとっては、いささか物足りなく感じられてしまうところはあるだろう。

そう考えると、本作は適度な難易度、適度な刺激を求める、ライトとヘビーの中間層に位置するプレイヤーたちにこそ最も向いている作品といえる。タップするばかりの簡単ＲＰＧに飽きたユーザーたちの、ちょっとした「冒険」にぴったりの作品だ。ぜひともまずはひと挑戦してみてほしい。