全世界で9000万本以上の累計販売本数記録を持つ超人気サッカーゲーム「ウイニングイレブン」シリーズより、スマートフォン向けゲームとして制作されたのが本作『ウイイレクラブマネージャー』。
シリーズの持つ緻密なシミュレーション性や、超高度なゲームエンジンによる超美麗なグラフィックを基本プレイ無料で楽しむことができるというのだから驚異的である。
プレイヤーは世界規模で活躍できる夢のクラブチームを作り、スカウトやチーム編成、練習の指示や施設の建設など、あらゆる部分に手を入れ、グラブを運営していくのだ。
ポジショニングからディフェンスラインの高さまで指示できるという、たいへん細かく奥深いゲームシステムとなっているので、ガチガチのサッカーファンこそ楽しめる内容といえるだろう。
EURO2016の後で、アイキャッチをベイルにするあたり、さすが人気サッカーシリーズらしく素晴らしい。
アプリの特徴
硬派なスポーツゲームに相応しく、取り立ててストーリーは用意されておらず、プレイヤーは遮二無二チームを強化し、勝利を積み重ねてリーグランクを上げ、ファンと資金を増やし、ホームタウンをアップグレードし、そして更なる強豪たちのひしめく上位ランクへと進んでいくのである。
クラブ運営は実にリアルでシビア。かなりのやり応えがあると同時に、難易度もかなり高い。
例えば選手には年俸が設定されているので、何も考えずに強いからという理由だけで能力値の高い選手ばかりを揃えてしまうと、あっという間に資金難に陥ってしまう、などといったケースもあるのだ。
なのでクラブの状況に適した能力と年俸の選手を揃え、チームをじっくりと強化していく必要がある。時には手持ちの選手の育成に力を注いだり、そのためにも施設のアップグレードを優先したりするなど、高い戦略性を求められることだろう。
ゲームシステム
ゲームを開始すると、まずはプロフィール作成やホームタウン登録などをすることになる。
選んだホームなどによって初めに使える選手たちが決定するが、能力値の高い選手が１人セレクトできたり、すぐに他の様々な選手を獲得できるようになるので、それほど考え込まずに決めてしまっていいだろう。
コンテンツは様々なものが揃えられていて、やり応えは充分にある。
人事の項目では、選手をスカウトできたり、マーケットから選手の交渉権を得ることができる。
また主力選手だけでなく、ユースの若手選手を育成したりすることもできるし、昇格させて試合に使うことも可能だ。クラブを健全に運営していくためには、生え抜きの選手を育てていくのも必要不可欠なのである。
試合はオートで進行するが、選手交代の指示やタイミング、さらには戦術の設定などはプレイヤーが行う必要がある。
戦術の指示も変更も、タップとフリックで簡単に、しかも感覚的にできるので、高度な思考が必要となる半面、ゲーム操作自体はたいへん明瞭で、遊び易いものになっている。
ゲームは２Ｄ表示だけでなく、ウイニングイレブンシリーズでお馴染の３Ｄ表示画面もちゃんと用意されている。
じっくりと試合を楽しみたい時は３Ｄで、さっくり短時間で試合を終わらせたい時は２Ｄで、などといった好みや状況によって自由に表示タイプを使い分けることができるのはたいへんありがたい。
また通常は２Ｄで、チャンスの場面などでは３Ｄに切り替わるといった、とても親切なモードも搭載されている。
総合評価
名だたる選手たちがおよそ5,000人以上登録され、忠実なグラフィックによって描かれているという、もはや無料ゲームの範疇を超えているといわざるをえない驚異的なまでのクオリティに、唖然茫然とするしかない。
そんなリアリズムに満ちた選手たちは、優秀なゲームエンジンによりヌルヌルと華麗に動いてくれる。さらにはボールを蹴る音や観衆の大歓声なども実に再現度が高いので、まるでテレビや会場で実際の試合を観ているかのような、そんな圧倒的な臨場感を覚える試合画面を楽しむことができるだろう。
戦術がはまり、見事チームがゴールを決めた瞬間の興奮と達成感はかなりのものがあり、リプレイや試合後のハイライトで味わうことのできる余韻と感動はなかなか筆舌し難いものがある。
サッカーファンだからこそ感じるのかもしれないが、『ウイイレクラブマネージャー』は間違いなく傑作である。
最高のグラフィックに最高のゲームエンジン、緻密な戦術性と戦略性、本格的な経営と運営のシステム……サッカーシミュレーションゲームとして、これ以上ないというくらい隙のない、きわめて高い完成度だ。とうとうウイニングイレブンがスマートフォンで、しかも無料で楽しめるようになったのかと、深い感動に包まれるばかりである。
しかしながらその隙のなさ故に、ガチガチのサッカーファン以外はとても入っていけそうにないと思えるほどの高い敷居が作られてしまっている。
内容がコアになればなるほど、どうしてもこういった尖鋭化のような状態を作り出してしまうのは仕方のないことだが、もう少しくらいは初心者やライトユーザーにも入り込んでいける余地というか、ナビゲートの増加や、モードやシステムを簡単なものに切り替えられる設定などがあったらいいのではないかと、いくらか思うのであった。
