本作は、ジェムサマナーという名の召喚士として4種類のガーディアンたちを操り、大軍で襲い来る敵から大切な封印石を守るという、タワーディフェンスゲームである。
基本的には既存のオーソドックスなタワーディフェンスゲームそのものといった感じだが、手札からスワイプでフィールド上にユニットを召喚するというカードゲームのようなスタイルには新鮮味があり、独自性のあるゲームとしても成立しているように思える。
またユニットを配置できる場所が非常に多く、スキル効果やユニット同士の隣接効果などが様々に用意されているので、かなり深みのある戦略性があるともいえ、たいへん自由度の高いプレイを楽しむことができるはずだ。
ストーリー
王道的ファンタジー物語を土台に、ライトノベル調のテキストでポップに展開していくのが本作の特徴。
キャラクターの個性が強いだけでなく、設定が深々と付けられているため、見た目以上に奥行きのあるストーリー性とその世界観を楽しむことができる作品だ。
とりわけキャラクター同士の掛け合いにまで細かく設定があり、同じ組み合わせでも複数のパターンが用意されているなど、シナリオ面は高く評価することができるだろう。
ゲームシステム
4種類のデッキから、プレイスタイルやステージに合わせて2つを選択し、攻略に臨もう。
デッキには、射程距離が長く飛行ユニットにも応戦できる「渦雷の軍勢」と、補助や状態異常に特化した「妖の蜃気楼」に、火力重視の「紅炎の狂戦士」と、かなりクセの強いユニットで揃えられた「日輪の一閃」というものがあり、それぞれ決まった10枚のカードで構成されている。
ステージの前後に会話パートが挟まれるだけでなく、配置の時にちょっとした掛け合いなどがあり、にぎやかで楽しい雰囲気。
他にもロード中に1コマ漫画が表示されるなど、プレイすればするほどに個々のキャラクター性も深まっていくようになっている。
バトルはウェーブ制。決められたウェーブ数を防衛できればクリアとなる。
まずはデッキからカードを引き、そのカードを自由に設置したところで、いよいよ敵の攻勢が始まる。
カードには防衛ユニットである「ガーディアン」と、トラップや特殊効果を付与できる「マジック」の2種類があり、それぞれ使用コストが異なる。
残りコストや味方と敵との相性など、様々な状況に合わせて対応していこう。
どんどんクリアしていけば、より歯応えのあるステージ攻略を楽しめるだろう。
本作にはスマートフォン向けゲームにしては珍しいことに、ガチャの要素が全くなく、プレイヤーの戦略性……つまり実力のみが勝負を決定付けるといっても過言ではない仕様になっている。
やり応え充分の作品といえるだろう。
グラフィックや音楽
グラフィックや音楽のクオリティは正直平凡といったところで、お世辞にも高いものであるとはいえない。
だがキャラクターデザインが現代ライトノベルの挿絵を思わせるポップでキュートなものになっていることもあって、なかなか親しみ易さがあり、ゲーム世界に入り込み易い雰囲気を作り出している。こういった点は素直に魅力的なところであると評価していいだろう。
また前述にもあるように、テキストが優秀なのも良いところ。掛け合いの豊富さやキャラクターの設定やそれぞれの関係性の深みなどは、他のタワーディフェンスゲームにはあまり見られないもので、たいへん興味深い。
総合評価
まず優れたテキストがあることによって、ファンタジー好きやライトノベル好き、またゲームにキャラクター性やストーリー性を求めるユーザーに、オススメすることができるゲームといえる。
ゲーム内容と、その根幹のシステム自体は基本に忠実なタワーディフェンスゲームでしかなく、目新しさは感じられないかもしれないが、だからこそ丁寧に作られているともいえ、バランスの良い作品として成立し、ライトからヘビーまで幅広い層のプレイヤーに対応できるものとなっている。
とにかく戦略面の自由度も高いので、プレイヤーそれぞれにそれぞれの楽しみ方でゲームに臨めるだろう。
まずはぜひ、お試しいただきたい作品だ。