スクウェア・エニックスによるディアホライゾンは、王道の冒険ファンタジーを描いた新作スマートフォン向けRPGで、同時にTVアニメや小説といったマルチメディア展開もされるという、かなり気合いの入った作品である。
プレイヤーは冒険者に憧れる少年「リアン」と、謎多き少女「ソフィア」といったキャラクターたちを操り、2人を追う帝国の脅威と戦いながら、伝説にある「理想郷セレス」を目指していく。
オーソドックスなセミオート形式のバトルではあるが、ダンジョン探索からシームレスにバトルに入るアクション性の高いシステムや、スタミナ制限なしというユーザーフレンドリーなゲーム設定など、かなり遊び易く、大いに魅力のあるものとなっている。
ストーリー
剣と魔法、モンスターと帝国、少年と少女。と、まさしく王道といえるファンタジーの設定と世界観、そして物語を体感することができる作品。
水平線の向こうに幻の大地「セレス」があると信じている少年と、生まれながらに「最果ての秘密」を知る少女という、さすがメディアミックス展開を含んでいるだけあって、キャラクターの作りは複雑かつ丁寧で、設定もしっかりしているように思う。
ガチャなどで入手できる他のキャラクターたちも魅力いっぱい。アニメ化などの今後の展開が楽しみでならない。
ゲームシステム
コンテンツ数はまずまずといったところ。
だが同盟(ギルド)やレイドボス戦など、一通りのコンテンツは揃っている。
未プレイの時間を有効活用できる「アイテム探索」などもあり、スマートフォン向けゲームとしてたいへん優秀な作りだといえるだろう。
ステージ数は多く、ワールドマップは広大である。
またステージのバリエーションが豊かなので、飽きが来にくく、冒険のワクワク感を強く感じることができる。
ステージは、マップを探索しながら、遭遇した敵と戦いつつ、最奥にいるボス討伐を目指すというもの。
バトルはセミオート形式で、プレイヤーは攻撃対象や範囲を指示したり、最適なタイミングでスキルを発動させたりして、戦闘を優位に進めていく必要がある。
ガチャで新しいキャラクターを獲得すると、キャラクターとのトークパートとなる。
1人1人の作り込みがたいへん細かく、仲間を集めていくのがとても楽しく感じられることだろう。
グラフィックや音楽
RPGだけでなく、スマートフォン向けゲームにおいても充分すぎるほどの歴史を積み重ねてきたスクウェア・エニックスだからこその高クオリティ。グラフィックや演出の数々、サウンドにアニメーションと、どれもたいへん素晴らしく、完成度はきわめて高い。
ただ残念なことに、ある意味で現代の日本市場向けゲームでは最重要ともいえる「ボイス」が、まったくよろしくない。声優が下手すぎたり、キャスティングに明らかに失敗していたりと、メディアミックスが前提の作品であるわりには、これはあまりにもお粗末といわざるとえないものがある。普通、フルボイスでないのはガッカリするところであるというのに、この作品においては正直これくらいで助かったと思ってしまうほど。これでは間もなく始まる(2017年秋)アニメの行方が心配。
総合評価
ボイス以外は素晴らしいという歪さは、かえってマイナス点を悪目立ちさせてしまっている感もある。クオリティは高く、スマートフォン向けRPGとしても完成度が高く、さらに意欲的な部分も多々あるだけに、傑作になりそこねているようなもどかしさは、まことに惜しい。
そして運営方法にも不安がある。メディアミックスとは、現代において多く制作予算を確保するための効果的な手段には違いなく、実際、本作の高クオリティさは、このプロデュースがあってこそのもの。スクウェア・エニックスのような老舗であっても、いや業界を生き残ってきた老舗だからこそ、こうした大前提は必要となってくるのだろう。
ただこの形式の場合、例えば同じく多額の予算をかけたアニメの方がこけると、あっさりゲームの方も終了を迎えてしまうということが多々あるのである。仲間を増やし、レベルを上げ、物語を進めていくその途中で突如終わりを迎えてしまうことほど虚しいものはない。こうした深い設定や作り込まれた世界を描いた作品では、余計そのダメージは大きい。
そうした不安さえ気にしなければ、これほど冒険心をくすぐられるRPGはない。RPGファンやストーリー重視のユーザーであるならば、きっと満足いく冒険の旅となることだろう。
スタミナなしや、ガチャにおける高レアキャラ排出率の高さといった、ユーザーフレンドリーなゲーム設定の数々は素直に称賛したい。どうにか上手く続いていってほしいと願う作品である。