各種ゲームアプリやボードゲームなどを開発してきたオインクゲームスによって制作された本作は、絵本のような幻想的な世界を冒険するファンタジーＲＰＧである。

絵本といっても、日本の子ども向けの明るいものではなく、海外の絵本というか、大人向けの教養絵本のようなもので、そのシナリオや世界観は果てしなく深く、そしてどこかおどろおどろしい。

基本的にはバトルはオートで進行するので、プレイヤーはスキルボタンをタップすることくらいしかやることがない。最近ありがちなスマートフォン向けＲＰＧのスタイルだ。

それは誰でも理解できるシンプルなシステムである以上に、１バトルが３分かからずに終わるテンポの良さを作り出すことに成功している。

しかしながら戦闘にキャラクターを投入するタイミングなどを見誤るとあっさり敵にやられてしまうなど、難易度はシビアだったりする。簡単なのはあくまで操作方法だけであって、ゲームレベルではない。やり応えは充分にある作品だ。

ストーリー

月からやってきたともいわれる謎の怪物、魔物、異形の者「アーガス」

その脅威によって、全ての街から火が奪われ、世界は闇に包まれてしまった。

光だけでなく、最愛の妹までも奪われた羊の少年サフォは、たった独りでもアーガスに挑もうと立ち上がる。

熾烈な戦闘を繰り広げながら、アーガスを殺し、少しずつ各地の町を解放していくサフォ。やがて多くの頼もしい仲間たちが集い、旅団を形成するようになっていく……

公式のアプリ紹介

個性的で強力な戦士たちを引き連れて、世界に火を取り戻す旅に出よう！

・無料でプレイ可能
・剣と魔法の世界で繰り広げられる、大迫力のバトルシーン
・個性的でどこか懐かしい感じのする、魅力的なキャラクターたち
・ハイセンスなデザインと音楽
・時間に追われず、ゆったりプレイすることができます

〜ある夜、突然100体の眼が襲ってきて、すべての街から火を奪っていった〜
これは、奪われた火を取り戻す物語。あなたは仲間を増やしながら、火を取り戻す旅に向かいます。

最大３体のキャラクターでチームを組み、様々な特徴を持った敵「アーガス」たちと戦います。

バトルはキャラクターごとに設定された性格によって自動的に進行しますが、育成方法や、特別なスキルの発動タイミングによって様々な展開が生まれます。

バトルを繰り返していくと戦士たちの体力は消耗していきます。しかし、次の町にたどりつくまで回復することはできません。限られたメンバーたちをうまくやりくりして、暗闇に閉ざされた町に光を取り戻していかなければならないのです。

操作は最低限ですが、ゲームプレイの奥深さを実現しています。冒険物語を読み進めるように、魅力的な世界を堪能することができるでしょう。

※「伝説の旅団」は最後まで無料で遊べるゲームですが、ゲーム内アイテムの一部を有料で購入することもできます。

 ゲームシステム

アーガスに大切のものを全て奪われたサフォは、短剣１本でアーガスに挑むことになる。

体は小さく、とても頼りなく見えるが、その心は勇敢で、頼りがいのあるリーダーとなる資質を持っていた。

そして他者を癒す能力も有している。

プレイヤーはこの少年サフォと共に、長い長い旅に出ることになるのだ。

闇に包まれた世界は広大で、旅は果てしない物語であるようにも思える。

だが少しずつ少しずつ、アーガスを打ち倒しながら、進んでいかなければならない。

町から町の道中、回復は一切なく、戦闘中にサフォの能力で治すか、１つ前の町まで撤退して休憩するしかないのである。

この連続戦闘をいかに乗り越えていくかが、本作の難しいところであり、プレイヤーの腕前を発揮するところなのである。

旅を進めていけば、どんどん仲間が増えていき、やがて「旅団」となっていく。

弓による遠距離攻撃や、魔法攻撃ができる仲間が増えれば、それだけ戦術の幅が広がっていく。

空から敵を攻撃できる仲間もいれば、対空攻撃ができる仲間もいる。

可愛い女の子のキャラクターもいる。彼女はお姫様。弓と補助スキルを持つ頼もしいメンバーとなるだろう。しかし、腕には奇妙な痣があり、それは次第に広がっていっているようで……

バトルには最大３体のユニットを投入できる。敵側は最大４体。どんな敵が待っているのかは事前にわかるので、相性などをよくよく考えて編成しなければならないだろう。

画面端に待機したユニットの上部「ＧＯ」ボタンをタップすると、動き始める。つまり、盾役を先行させ、その後に遅れてアタッカーを投入、最後に体力値の低い遠距離攻撃ユニットを投入、といったことができるのである。

このタイミング１つで、戦闘の結果は大きく変化する。思った以上に歯応えのあるバトルを楽しむことができるだろう。

BGMやグラフィック

古代遺跡の壁画に描かれているような横向きのキャラクターたちは、みな人間ではなく、動物たち。だが人間のように歩き、喋り、武器を持って戦う。敵はアーガスという名の実に醜く描かれた魔物たち。しかしどこか、元が何かであったかをプレイヤーに思考させる意味深なデザインでもある。

そして夜だけの世界。暗く、悲しく、苦しみに満たされた世界。プレイヤーが戦闘に勝てば勝つほど、篝火が灯され、世界がいくらかだけ明るくなる。

そんな世界、キャラクターの全ては、一切がモノトーン。色のない世界が「鮮やか」に広がっている。

戦い進む彼らの後ろに流れているのは、南米のフォルクローレを思わせる、もの悲しくも美しい音色、旋律。

この雰囲気に、いつまでも酔っていたい、浸っていたいと思わせる、芸術作品としての「美」が、この作品にはある。

総合評価

ここ最近のスマートフォン向けＲＰＧは、ガチャ特化のキャラクター作品が廃れ、できるだけ長く遊び続けられるようコンテンツを満載にした作品が流行りとなっている。

システムは複雑になり、テキスト量やグラフィック数もどんどん増大されていき、とにかく大ボリュームの作品が増加してきている。

本作はそんな世間の流れと真逆をいくように、シンプルゲームに近い肉抜きを施した、「軽さ」を重視した作品として設計されている。

オートバトルという手軽さ、簡単さ。しかし油断の一切できないシビアなゲームバランス。

多数のキャラクターと豊富な育成要素。そして時間と手間をかければ必ず課金に頼ることなく強くすることができる設定。

そんな絶妙なバランス感覚と味付けで、飽きそうで飽きない、噛めば噛むほど面白い、なんとも味のある作品として仕上がっているのである。

それでいて、１度に一気にバトルに臨めるスタミナはたった７だけ。７回だけしか無料では戦えない。じゃあ、また明日やるか。という感じになる。

これがまた重要なのだ。先が気になるような独特かつ興味深いシナリオが広がっていて、そして１日に数回だからこそ、明日もまたアプリを立ち上げて、遊んでしまうのである。

これはじっくりと少しずつ、時間をかけて攻略していくといった、ある意味で「新しいゲーム」でもある。

なかなかに興味深い一作であった。