本作は、パンデミックを起こしゾンビで溢れかえった都市で、奇跡的に生き残った美少女たちが、唯一の生き残り男性である主人公(プレイヤー)と力を合わせ、ゾンビと戦いながら生き抜いていくといった、サバイバルアドベンチャーRPGである。
ゲーム内容は、きわめてオーソドックスなセミオート形式のバトルだが、世界観にマッチした「感染度」というゲームシステムや、様々な人間模様が交錯するドラマ性の深いシナリオなど、なかなか高い独自性を持った作品でもある。
ストーリー
舞台となっているのは近未来の日本、東京湾に浮かぶ架空の人工島「渚輪ニュータウン」
事故、あるいは事件によって、ゾンビウイルスがばら撒かれ、死と恐怖が蔓延した都市で、ウイルスに抵抗力があった少女たちが、懸命にサバイバル生活を続けていた。
そんな中、少女たちは唯一の生き残り男性である主人公(プレイヤー)をゾンビの群れから救出。
主人公は少女たち少しずつ交流を深めながら、力を合わせてゾンビの群れに立ち向かっていくことになる。
そうしたサバイバルストーリーを繰り広げながら、失われた主人公の記憶、ウイルスの正体、世界の状況など、謎が謎を呼ぶ展開を、ボイス付きのテキストで堪能することができる。
ゲームシステム
コンテンツ数はなかなかに豊富で、メインストーリーを進めていくクエストモードの他にも、様々なイベントステージや、レイドボス戦、ゾンビの大群で協力して立ち向かう共闘戦などが用意されている。
ステージ攻略で獲得したアイテムを交換に出せる「闇市」や、他プレイヤーとのコミュニケーション機能など、意欲を感じられる試みが多く見てとれるゲームだ。
メインストーリーは、フルボイスのアドベンチャーパートを前後に挟んで進行していく。
ステージを重ねるほどに、新たな謎が生まれたり、真相が判明したりと、アグレッシブな展開を見せていく。
バトルは基本オートで進行し、プレイヤーはスキル発動や「感染度」のコントロールを適時行っていく。
「感染度」とは、ウイルスに耐えられる限界値を表したものであり、オーバーしてしまえば「発症」を迎え、キャラクターは自我を失って、味方を攻撃するようになってしまう。そうなれば、もはやその少女を攻撃して止めるしか方法はない。
だが「感染度」が高ければ高いほど、高い攻撃力を発揮することができるというのが、この作品の面白いところであり、困難な要素なのである。
強力な敵に相対した時には、リスクを背負う覚悟も必要になるのだ。
「発症」したキャラクターは回復などの措置が必要となり、戦闘が終わったらリセットなどという救済はないので注意。
なかなかに骨太なゲームといえる。
グラフィックや音楽
ゲームデザインやシステムこそシンプルなものだが、グラフィックやサウンドのクオリティは高く、全体的に完成度の高い作品としてまとまっている。
キャラクターデザインは、基本的には現代ライトノベルの挿絵のようで、皆可愛く、魅力的であるが、一風変わった感じのものも多く、良くいえば個性的といえるが、賛否両論はあるかも。
そうした少女たちには、それぞれ有名声優によるボイスが付けられている。小清水亜美や遠藤綾、大原さやかにゆかなといったベテランから、沼倉愛美に東山奈央、赤﨑千夏に井澤詩織といった大人気若手声優まで、なかなかバリエーション豊かに取り揃えられており、アニメファンや声優ファンのユーザーも注目できる内容となっている。
総合評価
美少女とゾンビという、幾度となくゲームや漫画の題材とされてきた組み合わせであるが、ゲームを進めるほどに少しずつ明らかになっていく主人公とウィルスの謎など、とにかくシナリオが良く、先の展開見たさにプレイに熱中することができる。
構成が上手いというだけでなく、随所のテキストが優秀なので、個性豊かなキャラクターたちとの交流にも深みが生まれており、アドベンチャーゲームとしてきわめて優秀な作品ということができるだろう。
そういったことから、ゲームにストーリーを求めるプレイヤーや、アドベンチャーゲームファンのユーザー、さらにゾンビものが好きなユーザーやギャルゲー好きなユーザーなどにオススメすることができるだろう。
RPGとしては「感染率」という独自性高いシステムにより、かなり緊張感と新鮮味のあるバトルを楽しむことができる。
だがその緊張感故に、ライトユーザーにはやや向かないところがあるか。難易度も、他のスマートフォン向けRPGと比べると、かなり高めに感じられる。
それだけに、歯応えを求めるRPGファンやヘビーユーザー向けの作品であるともいえるだろう。