真っ白な空間に、無機質な装置がいくつも並んでいる。装置からは球が吐き出され、床に零れ落ちていく。
プレイヤーが画面左右に表示された赤と青のボタンを押すと、装置の一部が動き、球をゴールである穴へと運ぶためのギミックとして機能し始める。それはさながら半自動式の「ピタゴラスイッチ」で、プレイヤーはギミックが的確に機能するように、動かす順番やタイミングをよく考え、ボタンをタップする。
そう、この『Perchang』は3Dアクションパズルゲームである。
ゲームレビュー
さしたるストーリーも登場人物もなく、それどころか何かしらの設定すら見られない。ただ真っ白な空間の中、心を持たない機械たちが動き続けている。
何のために機械は動くのか、何のために球は吐き出され続けているのか、何のためにそれを穴へと放り込まないといけないのか……それは誰にもわからない。
しかし考えれば考えるほど、奇妙なSF作品のようにも思えるし、ミステリ作品のようにも思える。古いゲーマーほど、想像力を無駄に掻き立ててしまう。
Perchangのステージは今のところ全60となっている。
初めこそタップするだけで自動的にクリアすることができるが、すぐに難易度が上がり、攻略に頭を使うことになるだろう。やり応え充分かつ、ボリューム感もたっぷりだ。
なおステージはミスなく時間をかけずにクリアできるとゴールドメダルを貰える。これを集めることで隠しステージを解放することができる。
美しく、面白く、見た目から楽しめるステージの数々。
ギミックは進むごとにどんどん増えていく。
さりげなく、影の表現なども見事なものなので、余裕がある時はぜひ見てやってほしい。
ギミックはシーソーやハシゴだけでなく、ファンを回したり、時には砂鉄を使ったものなども出現し、プレイヤーを飽きさせず大いに楽しませてくれる。
球はゲージで表示されている分だけ、ゴールである穴に放り込めればいい。
最後の一球はスローモーション演出で描写され、なかなかに手応えと爽快感と達成感を与えてくれる。
ステージの難易度は2乗に比例するがごとく上がっていく。もはやゴールドメダルを獲得するどころか、クリアも難しいようになってくることだろう。
ただローディングもなくすぐに再挑戦することができるなど、とにかくゲームテンポが良いので、攻略に詰まってもわりとストレスなく遊び続けることができるだろう。
総合評価
グラフィックはシンプルながらたいへん美しく、機械仕掛けの美というものをふんだんに味わうことができる。
ステージが進むほど、機械は増え、ギミックも増え、複雑さと難解さを増し、それがまた独特の雰囲気を醸し出し、奇妙な美しさを放ち始める。
例えば工場とかパイプとか、そういった煩雑さに美を感じられる人にとっては、何よりの美術的作品ともなり得るだろう。
とことんシンプルさが追求されたゲーム性とシステムと画面の作り。だからこその奥行きが生まれているというか、プレイヤーの感性に全てを委ねる「余地」として成立しているような感覚を抱いてしまう。これは見た目以上に不思議なゲームである。
この独特の雰囲気を楽しめるプレイヤー、そしてパズル好きのプレイヤーに適合したゲームといえるだろう。
ただパズルといっても、どちらかといえば思考よりも反射神経やリズム感などの方が重要になってくるような作りのステージが多いので、時間制限などに急かされるのが嫌だったり、素早く的確に作動させる慌ただしさを嫌うプレイヤーにはちょっと向かないゲームでもある。
そういったテクニックやセンスが求められるので、難易度は人それぞれに高いとも低いとも両極端な評価になるのではないかと思う。
それでもゲームテンポはきわめて軽快で、何度もリトライし易い作りになっているので、忍耐力さえあれば苦手な者でも楽しめるだろう。
口コミでの評判
筆者としては評価は高いだろうと踏んでいたが、Android・iOS共に4点に届かない惜しい結果となっている。口コミから原因を追究してみよう。
実際にプレイして口コミを書き込んでいるプレイヤーの多くがこのような内容ばかり。問題はゲーム性ではなく、アプリ自体にあるようだ。
マイナス評価の原因となっているのはこの2つが主だったもの。かなりの数で白画面のままという口コミが書かれていたので、この対応は急務だろう。
もう1つが広告に関してだが、これは無料アプリであれば仕方がないと考えるべきだと思う。中には広告が出るアプリは問答無用で削除というご都合主義のプレイヤーもいたが、無料でプレイ出来るという恩恵にあずかっているにも関わらず、広告を悪とみなすなんとも不思議な人だ。
話は逸れたが、ゲーム自体は間違いなく面白い。ピタゴラスイッチのような独特の世界観に魅了されるプレイヤーも多い事だろう。広告云々を除けば、問題はお手持ちのスマホが対応しているかという点だけなので、一度インストールしてみて画面が真っ白にならなければ是非Perchangワールドを楽しんでほしい。