本作は、テレビアニメ化もされた同名人気ライトノベルのゲームアプリで、2DコマンドバトルRPGの形で原作世界を追体験できるファン向けの内容となっている。
オリジナル主人公を設定するような最近のよくある形式ではなく、あくまで作中の人物を操作して冒険していくといったスタイルをとっており、作品のファンであればきっと楽しむことができるゲームになっている。
またセミオート式とはいえ、豊富なスキルを駆使して戦うバトルはなかなかの奥深さがあり、ライトにRPGを楽しみたいユーザーでも充分楽しく遊べるものになっている。
ストーリー
原作は電撃大賞を受賞した大人気ライトノベル。
舞台は、魔法が存在するものの秘匿されているといった、中世ヨーロッパ調の世界。
主人公は、半人半獣の姿のために人々から忌避されている「傭兵」と、禁断の魔導書を探して旅をする少女「ゼロ」の2人。
他にも原作に出てくるキャラクターが総登場。それぞれにアニメ版と同じ声優によるボイスも付けられている。
また原作の追体験ができるだけでなく、原作者である虎走かける氏によるゲームオリジナルシナリオまで収録されており、ファン必見の作品といえるものになっている。
ゲームシステム
クエストの前後などにはアドベンチャーパートが挿入される。
原作のストーリーを追体験できるだけでなく、原作者描き下ろしのゲームオリジナルエピソードまで楽しむことができる。
またキャラクター個別のシナリオも収録されており、そのボリュームのなかなかのものがある。まったくファンにはたまらない内容だ。
バトルはセミオートで進行。
プレイヤーは、キャラクターに装備させているスキルのアイコンをタップすることで発動させることができる。
発動のタイミングを合わせればコンボのように上手く攻撃を繋げていくことも可能だ。
コンテンツはクエスト攻略が中心。
他には決戦場という対人戦コンテンツもあり、報酬獲得を目指すランキング戦に挑むことができる。
さらには原作でも重視して描かれている「料理」の項目などもあったり。
作った料理を消費することで、その直後のバトルにおけるステータスがアップする。
必要となるレシピや食材は、クエストの報酬で入手していこう。
グラフィックや音楽
基本的にはアニメ版の絵の使いまわしが多く、バトル画面のCGもそれほど高いクオリティで作られているわけではない。
ただ原作者も直接製作に関わっているだけあって、テキストのクオリティは高く、原作ファンだけでなく、おそらくノベルゲーム好きやアドベンチャーゲーム好きなどのプレイヤーでも満足できるものになっているといえる。
そうしたテキストがフルボイスではないというのがまたちょっと残念に思うところではあるが、しかしアニメ版と同じく花守ゆみりや子安武人といった豪華声優陣によるボイスが搭載されており、要所やバトル時にたっぷりと聴くことができるのは素直に嬉しく思う。
総合評価
ゲームはきわめてシンプルな作りのRPGで、バトルはそこそこの戦略性こそあれど、あくまで原作を追体験していくためのサブコンテンツでしかないようにも思える。
しかしだからこそ、何の気兼ねもなく原作の物語を楽しめるし、異世界ファンタジーの世界を思う存分に楽しむことができるともいえる。
スマートフォン向けゲームのほとんどにあるマルチプレイのコンテンツをほとんど排除している潔い作りも、ファン向け作品としての確固たる方針のように思えて、いっそ好感が持てるほど。
ボリュームもありクオリティも高いゲームオリジナルエピソードなど、ファンにはたまらないサービスがわんさか詰め込まれているところも大いに高く評価していいと思う。
原作を未読だったりアニメ版も見たことがないといったユーザーには、あまり楽しめない作品であるかもしれないが、ファンにとっては間違いなく良作となるであろう。