本作は、古き良き王道ファンタジーRPGの世界を取り戻すために、魔王が勇者に転職し、ふぬけた魔物たちに喝を入れるといった、一風変わった作品である。
その内容は、どんどん進んでいく勇者(魔王)をゴールまで護衛していくといったもの。いわゆるタワーディフェンスゲームである。
迫りくる魔物たちや、勇者(魔王)の進行具合に合わせて、随時タワーを建て替えて対処していくことが、プレイヤーに求められる作業。
ただタワー建設に必要な「おかね」の少なさや、こちらの事情などまったくお構いなしに突き進み続ける勇者(魔王)の自由さなどに足を引っ張られ、そう簡単にはクリアすることができない。
難易度高めの、なかなか骨太なゲームである。
ストーリー
舞台となるのは王道的ファンタジー世界……ではなく、急速な近代化が進んでいるという一風変わったヘンテコなファンタジー世界。
時代が変わり、ITや若者の独立志向などにすっかりついていけなくなってしまった魔王は、あの懐かしい、清く正しく健全な、剣と魔法のファンタジー世界を取り戻したくなり、一計を案じる。
しかしそれがまたとんでもない考え。なんと魔王は、あろうことか勇者になりすまして、魔物たちに喝を入れていくのだという。あまりにも老害な行為である。あまりにも本末転倒な案である。
それでもプレイヤーは、このトホホな「世直し魔王様」を守り、勝利へと導いていかねばならないのである。がんばれプレイヤー!
ゲームシステム
ゲームを開始すると、まずはチュートリアル。
……なのに、敵の攻勢が半端ないような気がするのだが、気のせいだろうか。
コンテンツ数は少ない。基本的にはどんどんステージをクリアし、ストーリーを進めていくだけ。
ガチャを回せば装備品などを入手することができる。
タワーを建てて、ゴールへと突き進む勇者(魔王)を守るのが基軸となる。
ただ敵の中には、勇者(魔王)ではなく、本陣を狙う者もいるので、そちらの防衛も忘れてはならない。
タワーユニットの他には、サポートユニットがバトルに参加しているので、こちらはアイコンをタップして、様々な状況に合わせられる遊撃隊として動かしていこう。
ステージの前後にはコミカルな会話劇が挿し込まれることも。
危ないメタ発言も多く、RPGファンなどの笑いを誘ってくる。
グラフィックや音楽
グラフィックなど全体的にクオリティは、正直なところあまり高いとはいえない。ひと昔前の同人ゲームでよく見たようなグラフィックや、なんともいえない低品質の音楽など、あまり期待できるようなところは見当たらない。
ただそうしたぼんやりとしたようなクオリティが、脱力感となって、妙に作品世界の雰囲気とマッチして、奇妙な味わいとして昇華されているように思える。
ギャグが詰め込まれたテキストは実に面白可笑しく、この点のクオリティは素直に高いと評価することができるだろう。
総合評価
基本的には、攻守入り混じった変化球系のタワーディフェンスゲームといえる形であるが、やはりコミカルなギャグと、ステージの難易度の高さが目立つ作品である。
スキルやサポートキャラクターなど、タワー以外の要素を効率よくタイミングよく使用していかないと、ステージクリアは難しいだろう。
ただどうしてもクリアできないとなっても、本作のタワーやキャラクターには恒常的にレベルの概念があり、通常のタワーディフェンスゲームと違って、ステージ度にリセットされることのない強化育成が可能であるので、時間をかけて資金を貯め、ガンガン育成してしまえば、力押しでも攻略は可能なのである。
そもそも最奥の敵拠点を攻める際は、タワーを設置できる場所もなく、キャラクターや勇者(魔王)のスキル攻撃に頼る他なくなるので、育成は必要不可欠な行為となるのだ。
そういった意味では、本作はタワーディフェンスRPGとジャンル付けするのが最も正しいのかもしれない。
わりと1ステージにかかる時間も長めなので、育成に時間を費やすのはと思うユーザーや、もっと気楽に楽しみたいといったユーザーにはあまり向かない作品といえる。
対して、レベル上げが楽しいと感じるRPGファンなどには、大いに魅力的なゲームになることだろう。
他にも、ちょっと変わったタワーディフェンスを楽しんでみたいというユーザーにもオススメすることができる。