23/7 トゥエンティ スリー セブン作は、世界から9時が消滅して1日が23時間になった世界で時間支配を目論む「クロッカーズ」と呼ばれる「王」たちの戦いを描いた現代SFファンタジー作品で、ジャンルはセミオート形式のRPGとなっている。
世界観や設定以上に独特なのは、そのバトルシステム。よくあるスキル使用のタイミングを合わせるだけのセミオート形式ではなく、プレイヤーが行うのは「時間モード」の変更で、左フリックで倍速攻撃ができる「アクセルモード」や、下フリックすると攻撃が一切できなくなる代わりに必殺技ゲージを蓄積することができる「チャージモード」など、指先1つでバトルの状況や環境を変化させることができるのである。
バトル開始から77秒間は無敵時間という「インビンシブル77」といったシステムも実に特徴的。革新と野心に満ち溢れた、新しい可能性のスマートフォン向けRPGといえる作品だ。
ストーリー
プレイヤーの操る主人公「神名ヒカリ」は、ごく普通の高校生であったが、ある時、時間を操る能力者として覚醒し、消失した「9時」を取り戻すための戦いに身を投じることとなる。
と、いかにも現代ライトノベルにありがちな設定で、仲間としてパーティに編成できるユニットも、時間操作能力によって召喚した歴史上の人物……ただしほとんどが女体化しているといったもの。好き嫌いは激しく分かれる内容といえるかもしれない。
ただ、ゲーム内で本格的な「小説」を、まるで電子書籍アプリで見るように縦書き形式で読むことができるなど、ストーリーにはかなり力が入れられているので、ストーリー重視のユーザーや、ノベル好きのユーザーはかなり楽しめるのではないかと思う。
ゲームシステム
チュートリアルを終えてのスタイリッシュなオープニング映像は必見。
ペルソナなどの現代をテーマにした作品が好きなユーザーには間違いなく「刺さる」ことだろう。
基本的にはクエストを攻略してストーリーを進めていくのがメインコンテンツとなるが、8人のユーザーが力を合わせて巨大ボスに挑む協力戦なども用意されている。
コンテンツ数は少なく、まだ発展途上といった様子であるが、イベントステージなどは充実しており、これからの追加を期待することができるだろう。
ステージは、初期こそボス戦だけだったり、1本道だったりするが、進めていけばやがてルートが分岐するようになったりもする。
バトルでの無敵77秒は「持ち越し」の方式となっているので、いかにボス戦まで無敵時間を残せるかも重要な戦略の1つとなるわけである。
そうした無敵時間や、各種モード、そして無敵かつ超高速攻撃ができる「バレットタイム」を駆使して、次々と立ち塞がる強敵を撃破していこう。
ステージを攻略できれば、アドベンチャーパートを挟みつつストーリーが進行していく。
それと同時に「ライトノベル」のページが解放され、より深く描かれたストーリーを読むこともできるようになる。
パーティに編成できるユニットはガチャで獲得したり、クエスト報酬で得られる「クオーツ」を集めて召喚することができる。
育成要素が豊富で、やり込み要素は充分。
周回するほどにレア武器がドロップできたりと、ハクスラのような楽しみを味わうこともできるだろう。
グラフィックや音楽
グラフィックやサウンドなど、あらゆる面のクオリティが高く、独特なデザインや世界観に抵抗がなければ、間違いなく「酔える」作品である。
とりわけ演出が実に素晴らしく、スマートフォンの小さな画面とはとても思えないほどの迫力と臨場感を覚えることができる。プレイヤーの「現実」とリンクさせたような手法などは、見事という他ないものだ。
しかしそれだけに、虚構と虚構として割り切れない人には、かなり心臓に悪い体験になってしまうので注意。ゲームというものに慣れたユーザーでないと、ちょっと「誤解」を招いてしまうこともあるかも。それほど、演出に「キレ」があるのだ。
なお、キャラクターボイスには有名若手声優を中心にズラリとキャスティングされているが、ちょっとイマイチなものも多く、声優ファンやアニメファンには不満を感じてしまう部分となってしまうかも。
総合評価
これほど「意欲作」という言葉がしっくりくる作品はないのではないだろうか。まだまだゲームには様々な可能性があるのだということがよくわかるゲーム体験となった。
特徴の多いゲームだが、やはり特筆すべきところはバトルシステムだろう。感覚的操作で攻防を切り替えられる操作性と戦術性や、77秒の無敵時間をいかに上手く使うかというテーマ性と戦略性など、ただ斬新なだけでなく、良質のゲーム性といえるものであった。
既存のスマートフォンRPGに飽きたというユーザーにこそ、強くオススメできるゲームである。まずはぜひ、試しに遊んでみてほしい。