一見するとチェスのようなボードゲームであるが、そこに戦略シミュレーションゲームの要素を加味し、配置したユニットを移動させマス目を取り合うことで攻防する、といった独自性の高いシミュレーションＲＰＧへと昇華させている。

ユニットはステータスだけでなく、それぞれ攻撃方向や範囲が限定されており、強力なスキル発動の条件も異なる。

プレイヤーはそれら個々の特性を見極めて戦略を練り、戦況に合わせて動かし、効率よく敵にダメージを与えていかなくてはならない。

ユニット間の連携攻撃などの要素もあり、その戦略性はきわめて深く、果てしない思考となることだろう。

そうなると１ゲームに多大な時間を要するように思えてしまうが、本作はスマートフォン向けゲームということをきちんとよく理解できており、投入できるユニット数を絞ったり、ステージを狭くすることによって、試合時間を短くすることに成功している。

こちらが熟考しようともわりとテンポよく進むので、ちょっとした隙間の時間にプレイするスタイルでも充分に楽しめることだろう。

ストーリー

メインストーリーはコテコテの王道ファンタジーといったもの。

プレイヤー（主人公）と、ナイツ（騎士）と呼ばれるユニットたちの冒険譚が描かれている。

ゲーム内容的に対人戦がメインになるようなところもあるためか、ナイツそれぞれの設定などはわりと軽めで、おまけ程度といったところか。

公式のアプリ紹介

攻撃力、体力？？数値がすべてじゃない！！戦略で勝負する新感覚のSRPG。単純な戦略はもう終わり！自分だけの戦略で相手の騎士を倒してください！

★ アレナPvPとステージモード
ユーザーとリアルタイムで対決するPvPシステム、そしてステージモードまで！！多彩な戦術と戦略を備えた相手との息をのむアリーナでの一本勝負をお楽しみ下さい。

★様々な騎士のスキル
どんなタイプがお好みなのかがわからないので様々な騎士を作り上げました。様々な個性を持った騎士とスキルの幻想的な組み合わせ！

さあ、あなたが騎士の新しいマスターになってみる番です。

 ゲームシステム

まずはチュートリアル。ナビゲーターに従って操作していこう。

試合に関しても入念に指導してくれるので、問題なくゲーム内容を理解することができるはずだ。

ゲーム内容からしてメインは対人戦になるわけだが、シングルプレイとなるメインクエストもステージ数は多く、なかなか充実している。

ステージを進んでいけばユニットを入手することもできるので、対人戦の前にまずは練習も兼ねて、クエストをどんどん進めていこう。

バトルはターン制。

画面左下に表示された数字の分だけユニットを移動させたりスキルを発動させたりできる。

この数字はターンが進むごとに増加するので、どんどん行動や攻撃が苛烈になる。このシステムによって、思考性ゲームにありがちな停滞などテンポの悪くなるところが解消されているのである。

ユニットはガチャで入手できる。ガチャは試合に勝ったりクエストをクリアしたりするだけでなく、レベルアップやデイリーボーナスでも回せるので、わりと無課金でもユニットを集め易い。

ユニットがダブると、その同ユニット同士が合成され、レベルアップするといった方式も取られている。レベルが上がれば新しいスキルを覚えたりもする。どんどん遊び、どんどんガチャを回し、どんどんパーティを強くしていこう。

グラフィックやBGM

グラフィックはなかなかクオリティが高く、２等身のキャラクターたちはみな可愛く、愛着が湧き易い。

キャラクターデザインは独特の雰囲気があるが、どことなく懐かしい感じがするのは、プレイステーション２の作品などで一時期流行ったデザインにいくらか似ているところがあるからではないだろうか。

全体的にクオリティは高く、思考性のゲーム内容でありながら、とにかくストレスなく感覚的に楽しめるように工夫が施されている。アイコンやメニュー画面の見易さなどは実に上手くできているように思う。ヘルプ機能だけが付属していないのが惜しいところではあるが。

簡素になりがちなボードゲーム形式のバトル画面も、エフェクトの使い方や効果音などが上手く、適度な迫力を感じられる。熱いバトルを楽しめるだろう。

総合評価

ボードゲームとシミュレーションＲＰＧを組み合わせた作品ならばこれまでも多く作られてきたが、本作のように、それぞれの要素を上手く取捨選択し、効果的な合わせ方ができているような作品はそう多くない。

特に思考性を一番に取り上げながらも、ゲームのテンポを早くしているといったバランスの良さは、スマートフォン向けゲームとして大いに高く評価することができるだろう。

またユニットの能力に頼れず、勝負を決めるのはプレイヤーである、といった点も、他の多くのスマートフォン向け作品と異なるところだ。

費やした課金額や時間ではなく、己の技術と思考だけで勝負したい！と望むプレイヤーには最適といえるゲームだろう。

ただそれだけに、対人戦では「プレイヤーが強くないと勝てない」ので、強いユニットを持っていれば勝てるといった課金ゲームしかプレイしていないようなライトユーザーには、ちょっと楽しむことができないかもしれない。

だが本来のゲームとはそういうものなのである。たじろがず、ぜひとも挑戦していただきたい作品だ。