Summer Vacationによる新作スマートフォン向けゲームは、王道のファンタジーストーリーを軸にした、オーソドックスなターン制コマンド式RPGで、ドット絵によって描かれた戦闘シーンや、仲間モンスターの育成などといったシステムなど、どちらかといえばオールドファンに向けて作られたような、クラシカルかつノスタルジックな雰囲気の漂う作品となっている。
しかしそれでいて、行動選択の自由やスキルポイントの蓄積など、かなりの戦略性があり、そして独自性も高いシステムが盛り込まれており、決して単なる回顧作などではないということがいえる。
製作陣の意欲と意気込みを感じることのできる、たいへん熱量の高い作品だ。
ストーリー
物語は、勇者と魔王の戦闘が終わって5年の月日が経ってから始まる。
勇者によって魔王が倒されたことで平和が訪れたはずの世界……しかし今、次々と異変が起こり、封印されたはず魔物も出現するようになり、ついには魔王の配下であった魔人たちも怪しい動きを見せるようになってしまった。
そんな中、勇者サラの剣の弟子である主人公は、再び跋扈するようになってしまった魔物を討伐するべく、冒険の旅に出ることになるのであった。
ゲームシステム
闘技場からレイド戦、各種ミッションにアイテム精製、さらにカジノなど、コンテンツ数が豊富なだけでなく、1つ1つがまた大ボリュームな作品。やり応えは充分すぎるほどあるといえるだろう。
イベントも頻繁に更新されており、活気ある作品であるともいえる。
バトルはターン制で、アイコンをタップし、スキルポイントを消費してスキルを発動していくといった流れになる。
この時、スキルを使わずに貯めることで、さらに威力を倍増した攻撃を繰り出すことも可能。なかなかに戦略性の高いバトル内容となっている。
バトルでの報酬やガチャでは、ユニットや装備品を獲得することができる。
また装備品に関しては、集めた素材を使って製造することもできる。これがまたたいへんな大ボリュームになっており、やり応えがある。
カジノというスマートフォン向けRPGではちょっと珍しいコンテンツも用意されており、それがまたきちんと作り込まれているのがまた素晴らしい。
現在ではポーカーをプレイすることができる。勝ち分をさらに賭けて当たりコインの倍増を目指すハイ&ローなどもしっかりと用意されているので、運が良ければ序盤から最強パーティを作り出すことも可能だろう。それほど報酬は強力で魅力的なものばかりなのだ。
グラフィックや音楽
ドット絵で構築された世界は、まさしくノスタルジックなもので、スーパーファミコンのRPGに青春をかけていたような世代のユーザーにはたまらないものがあるだろう。
一方、そこに郷愁を感じることのない若いユーザーにとっても、カットインやド派手なエフェクトと合わせた豊かな動きを見せるドット絵は新鮮に映ることもあるだろう。決して古臭いと感じるだけではないはずだ。
ただそうした良質のグラフィックに対し、いささかテキストのクオリティが低いのが残念でしかない。台詞などは絵と同等にキャラクターを構築するために必要不可欠な要素である。決してそこをおろそかにしてはいけないはず。どうにも歯痒いものがあった。
総合評価
古さと新しさが融合した良作RPGで、世代を問わずに多くの者が楽しめる作品だといえるだろう。
スキルポイント制やアイテム生産など、やり込み要素の多い作品でもあり、またやればやるほどにボスレイド戦への参加ができるようになるなど、さらにコンテンツが増加していく。そこには達成感もあるといえるだろう。
またクエスト報酬で課金石が入手できるなど、無課金でも充分に遊べるよう作られているところも好印象。
ただ基本のシステムはあくまでターン制コマンド式というきわめてオーソドックスなものなので、常に新しいものや強い刺激を求めるようなユーザーには適さないか。
それでも実際にプレイしてみれば、3DCGの作品とはまた違った刺激を受けられるはずなので、見た目だけで判断せず、ぜひ一度試しにプレイしてみてほしい。相性が合えば、きっと長く楽しめる作品となることだろう。