トイロジックより配信されている八百万クエストは、ゼンリンの地図とスマートフォンの位置情報システムを活用したRPGで、実際に現実の街を歩き、アイテム集めやバトルを行い、各種クエストをクリアしていくといった、たいへん斬新な内容になっている。
ショップやイベントに行くのにも、実際にリアルで歩いてそのポイントまで向かわなければならないということで、気楽にプレイできないハードルの高さを感じてしまうが、それだけに他のゲームでは絶対に味わえない、臨場感のような不思議な感覚を味わうことができるだろう。
あらゆるものに神が宿るという、まさに日本の「やおよろず」の思想を体感させてくれる作品でもある。
街を歩き回れる時間と体力のあるユーザーは、ぜひとも挑戦してみてほしいゲームだ。
ストーリー
ストーリーは、日本神話に即したファンタジー作品となっており、日本人ならきっと親しみ深く感じられる神様や妖怪たち、そして歴史の偉人や明治の文豪などのキャラクターたちと共に、プレイヤーは天界「アマハラ」を脅かす大荒神「ヤマタノオロチ」を倒すための大冒険を繰り広げていくことになる。
宿屋が「雀のお宿」だったり、敵が闇に呑み込まれた力士だったりと、日本の昔話や文化に精通しているユーザーほど楽しめる作品ともいえるかも。学生ユーザーの勉強にも最適か。
テキストは軽めなので、日本語と文化の勉強がてらに外国人プレイヤーが遊んでみるというのも悪くないように思える。
ゲームシステム
探索やクエストのマップは、現実にプレイヤーがいる位置の地図情報が反映される。
プレイヤーは宝箱や敵、宿屋や釣り場といったアイコンの場所を目指して実際に歩いて到達しなければならない。
クエストモードでは、指定された場所のボスモンスターを退治するなどできればクリアとなり、それまでの道中で集めたアイテムなどを獲得することができるのである。
バトルはオーソドックスなターン制コマンド選択式。
スキル攻撃や奥義などを駆使して、敵を撃退していこう。
ちなみに奥義ゲージは持ち越し制なので、ボス戦前の雑魚戦で溜めておく方がいいだろう。
使用できるキャラクター「ヤオヨロズ」は、バトル報酬やガチャで獲得することができる。
キャラクターは、バトルで使用して経験値を稼いだり、お地蔵様にお供えをしたりすることでレベルアップさせることができる。
装備品などもあり、育成要素はなかなか豊富。
基本的には冒険と探索を進めていくのがゲーム内容となるが、リアルで複数人が集まってクエストに挑むというマルチプレイモードまで用意されている。
そこでは協力して開ける宝箱や、多数決でのクイズなど、パーティゲーム的な要素もあり、また違ったゲーム感覚で楽しむことができるだろう。
グラフィックや音楽
和のテイストが十二分に活かされたグラフィックやキャラクターデザイン、ゼンリンによる正確な地図と正確性の高い位置情報システムなど、全体的にクオリティはたいへん高い作品である。
バトルはあっさりめの演出と効果で、少々迫力や手応えが薄く感じられるが、昔懐かしの王道RPGを意識したような安定感ある作りは、古典RPG好きにはたまらないものがある。
ただ大量のバッテリー消費など、歩く以上にプレイを阻む障害も多い作品。
また夜歩きは危なく、特に冬は身体にもよくないので、昼間に時間をとれるユーザーのみが遊ぶことができるという、かなり高いハードルの設計も気になってしまう。何か救済措置等がほしいところ。
総合評価
とにかくプレイするのに労力と体力と時間を要するゲームなので、プレイできるユーザーはかなり限られてしまうかも。
実際にプレイしてみると、ストーリーとリアルとのリンク感や、キャラクターたちとの親和性など、なかなか得難い、素晴らしいゲーム体験を得ることができるのであるが、そこに至るまでが厳しく、多くのプレイヤーは1km近く歩く必要がある、長すぎるチュートリアルに辟易して、プレイするのを止めてしまうような気がする。
歩きスマホはやめましょう、と忠告が出るわりには、歩きスマホしないとプレイがおぼつかない仕様になっているのも引っ掛かるところ。もちろん目的地到達の通知など、様々な工夫が施されているが、それも完全ではなく、やはり画面を確認しながらでないと軽快にクエストをクリアしていくことなどできないようになってしまっている。
またクエスト失敗時には、そのクエスト時の全ての成果が消えてしまうというハードコアな設計になっているため、たくさん歩いてアイテムを集めまくっても全てが徒労に終わってしまうという、あまりにも無慈悲な結果で、心が折れてしまう。
ハード上等のヘビーユーザーを中心にオススメできる作品といえるだろう。
他にも、世界観を丁寧に作り込んだ作りにより、古典RPG好きなどにもオススメできるので、まずはどんなものかと、お試しでプレイしてみてほしい。