「ささやき - いのり - えいしょう - ねんじろ!」
あの頃「Wizardry」と共に過ごした者たちのために作られたようなゲーム。それがこの『ウィザードリィ スキーマ -Wizardry Schema-』である。
GMOゲームポットより配信されている本作は、Wizardryシリーズの正式な新作であり、スマートフォン向けに設計されている。
その設計とは、プレイヤーはパーティ編成と装備やスキルを整え、ダンジョン探索の行動指針を決めるだけで、あとは冒険が終わり帰還してくるのを待つだけ、という、いわゆる「放置型ゲーム」のシステムをとっているところである。
簡単操作で、しかもごく短い時間を費やすだけで、重厚で深みのある冒険を楽しむことができるという、スマートフォンという環境を最大限に利用した、ある意味で画期的ともいえるRPG作品だ。
ストーリー
剣と魔法のファンタジー世界で、プレイヤーは、とある冒険者ギルドの設立者となり、村の村長となり、多種多様な種族や職業の冒険者たちを集め、いくつものパーティーを作り、様々なダンジョンを攻略したり、舞い込んでくる事件や依頼を解決していく。
従来の「ウィザードリィの世界」を下敷きとしながら、現代ライトノベル的なファンタジーストーリーが展開していく。
メインからサブまでのクエストには膨大なテキストが用意されているので、冒険と共に様々な物語も楽しむことができるだろう。
ゲームシステム
ダウンロードが終わりゲームを開始すると、まずはチュートリアルが開始されるので、指示に従って操作していこう。シナリオは文章が長く重厚さがあるが、実によくできているので、ノベル好きの方などはぜひ楽しんでほしい。
キャラクターはNPCの他にもオリジナルで作成することができるので、どんどん作ってパーティを編成していこう。
キャラクタークリエイトは、ヒューマンからドワーフにエルフなど、多種多様な種族から選び、ステータスを振り、職業を選択する。種族も職業もゲームを進めていけばどんどん増えていくので、創造の楽しみは尽きない。
主人公は冒険者ギルドの長というだけでなく、このディメント辺境の村を治める村長でもあるので、冒険で得たお金や素材を使って村を発展していくこともできる。
村が発展すれば、より多くの冒険者を雇えたり、新しい職業などを発見できたり、様々な特殊効果をもたらしてくれる。
ダンジョン攻略などの冒険はログを見るだけのものになるが、冒険中でも詳細をリアルタイム情報として確認することができる。
パーティは初めに与えた指示に従って探索し、トラップを潜り抜け、モンスターを倒したり宝を見つけたりしてくれる。
冒険中や帰還後に、このログを確認することで、次にどういう対策をとればいいのかがわかったりするので、放置ゲームとはいえかなり戦略性は高い。
ログの中の情報をタップすれば、どんなトラップに引っ掛かったのかも、どこでどんな宝を手に入れたのかも詳細が明らかになる。
特にモンスターとの戦いは、どのような経緯で戦闘が進んだのか、誰がどのように活躍したのかも全てがわかるので、強化や編成のヒントとなるのである。
きわめて簡単な操作で、時間も必要としないながらも、なかなかに奥が深いシステムだ。
総合評価
グラフィック・BGM
キャラクターデザインは、まず冒険者たちには多種多様なパターンが用意されているので、好みと合う絵を使うなりしていけばいいだろう。モンスターデザインに関しては旧作の雰囲気をそのままに残していて、ファンにはたまらないものとなっている。
グラフィックは美しく、世界観に合わせて重みがあり、冒険心をくすぐってくる。
また音楽がたいへん素晴らしいので、ぜひBGMをダウンロードしていただきたい。
感想・評価
管理するだけというプレイ内容にゲーム性を感じない人や、シリーズ従来の本格RPGを期待した人にとっては、評価が低くなってしまう作品だろう。
しかし育成ゲームとして、シュミレーションゲームとして楽しめる者にとっては、本作は最高のゲームに化ける。
随所にはっきりと見られる「ウィザードリィらしさ」と、海外RPG的な自由度の高さの噛み合わせも絶妙で、とにかく「冒険に出ているというリアル感」を感じることができ、世界に浸透することができるので、ついついやり込んでしまうのだ。
さらにはアイテム収集やモンスター図鑑の穴埋め、村の発展に新しいキャラクターのクリエイトにと、やり込み要素が膨大で、好みさえ噛み合ってしまえば面白さは尽きないものとなる。
それでいて、一旦冒険に出してしまえば後は待つだけというシステムにより、膨大な時間を泥棒される危険性も低くなるので、かえってありがたく感じるほどだ。
現実のほんのちょっとした「隙間」を使って、壮大な冒険を繰り広げることができる作品である。