ソラとウミのアイダは、近未来のSFファンタジー世界と、尾道というアニメファンや映画ファンお馴染みの土地を舞台にした、アクションRPGである。
アクション部分は引っ張りアクションに近い、スマートフォン向けゲームにはよくある仕様で、別段珍しくはないが、LIVE2Dを採用した美麗なヒロイングラフィックや着せ替え機能など、ギャルゲー的な要素が濃く、男性ファンを中心にした作りとなっている。
そうしたゲーム内容だけでなく、宇宙で漁業する女の子たちという、あまりにもぶっ飛んだ設定や、そのヒロインたちに方言属性や変な口調などが付いているところなどは、原案・総監督は広井王子という看板を見れば納得、といったところか。
オールドゲーマーとしては「サクラ大戦」を思い起こさせる時限式の選択肢画面に、懐かしさを覚えるばかりであった。
ストーリー
舞台となるのは20XX年の近未来。海から魚が消え、人々は水産省が宇宙に作った巨大な「宇宙イケス」によって魚を育て、漁を行っているという、なんとも不思議というか、珍妙な設定の世界が描かれている。
プレイヤーは「尾道宇宙漁師育成センター女子部」の部長として新しく赴任し、6人の新米宇宙漁師たちを育成していくことになる。
メインとなるのは、その6人のヒロインたちとの交流を描いたストーリーで、クエストをクリアするほどに解放されていくシナリオを見るとレベルを上げることができるという、これまたちょっと変わったシステムだ。
コミュニケーションの他に、贈り物で信頼度を上げたり、一定時間のステータスアップなどを付与することもできる。衣装を贈れば着せ替えも可能だ。
ゲームシステム
ゲームを開始すると、まずはお馴染みのチュートリアル。
ナビゲーター役の鳴海高子に従って操作していき、ゲーム内容や操作方法を把握していこう。
チュートリアルを終えるまでに、6人のヒロイン全員と遭遇することができるので、初めのチームメンバー選択はそれほど悩まなくていいだろう。
基本的には「宇宙漁業」で様々なクエストに挑み、ストーリーを進めていくことが、主なゲーム内容となる。
コンテンツ数は少なく見えるが、これから増加していくような様子は見受けられる。まだまだ発展途上にある作品といえるだろう。
「宇宙漁業」は、ユニットを魚にぶつけて攻撃していくといったもの。
出撃ボタンを長押ししてエネルギーをチャージし、そのままスライドで方向を定め、指を放して発射する。
他にもゲージを溜めての「ブン」や、MAX攻撃の「神激スプラッシュ」など、ド派手なアクションを楽しむことができる。
アクション以上に、ヒロインとのアドベンチャーパートが充実した作品。
選択肢の決定には時間制限があり、緊張感のある生っぽいやりとりが堪能できる。
決定した行動や言動で、絶妙な反応を見せてくれるのがなんとも楽しい。
グラフィックや音楽
アニメ「きんいろモザイク」や「ひなこのーと」の総作画監督で知られている植田和幸によるキャラクターデザインは美麗のひとこと。どのヒロインもたいへん可愛らしく、魅力的に描き出されている。
またそうした絵が、LIVE2Dによってぬるぬると動き、活き活きとした存在としてプレイヤーの目の間に現れるのは圧巻ともいえる。細かい仕草の1つ1つも丁寧に描かれているので、思わず色々なところを触ってしまったり、延々と眺めてしまったりしてしまうのであった。
しかし肝心のボイスの質が、かなり低いのがきわめて残念。大半のキャラクターが棒読みで、喋る度にげんなりとしてしまうのだ。
おそらく初めからメディアミックスの1つとして、声優をアイドルユニット売りしていくことを決めているために、歌って踊れて、しかもビジュアルが良い人でキャスティングしたのだろう。
もちろん、棒読みなのは新人だからなので、これからどんどん上手くなっていくこともある。なので、そうした「中の人」の成長も楽しめる、といったような、未成熟なアイドルグループを追いかけていけるようなタイプのユーザーは、きっと余計に楽しんでいけるはずだ。
総合評価
斬新でありながら、どこか懐かしさもあるような、実に不思議な作品である。
アクションゲーム好きやRPG好きには賛否両論あるようなゲーム内容ではあるが、ギャルゲー好きや美少女キャラクター好き、そしてアイドル好きのユーザーには問題なくオススメできそう。
とりわけシナリオは、さすが広井王子と思える、グッとくるようなところが多く、豊かな人間ドラマを楽しむことができるだろう。
メディアミックスも含めて、これからどんどん盛り上がっていきそうな気配もある作品だ。